短編・御礼
□桜
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人間は、儚い物を『美しい』と感じるらしい。
雪、花、…例を挙げればキリがない。
そして、儚い物の例として最も知られているのは桜だと思う。
「小牧さん!」
「毬江ちゃん」
「さっきから上の空ですけど…どうしたんですか?」
「桜を見たら色々と考えちゃってね」
「?」
首を傾げている彼女にさっき俺が考えていたことを伝えると、彼女は納得がいったように軽く頷いた。
「確かに、桜といえば儚さがありますね」
「うん。やっぱり、散る姿を見ているからかな?」
「そうですね。満開のときは風が少し吹いただけで散っちゃうし…」
そう言って桜を見上げる彼女。
その姿はどこか儚げで。
どこかにいってしまわないよう、軽く抱きしめる。
「…、小牧さん?」
「毬江ちゃんは、桜に似てる」
「え?」
不思議そうにこっちを見て、それから微笑んだ彼女。
背中に腕がまわされる。
「私はそんなに簡単に散りませんよ」
「でも、時々不安になる」
「じゃあ、」
そう言って彼女は俺の胸に顔を埋めた。
「せめて、散る瞬間まで傍にいます」
桜
散りゆく姿にこめられし
優美なる小春の美しさ