短編・御礼

□ひまわり
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「光稀さんってさ、」

「…なんだ」

「よく空を眺めてるよね」

「悪いか」

「いや、誰も悪いとか言ってないから」



そっぽを向いている君を見て、思わず笑ってしまった。

もう分かる。
彼女は今照れているという事が。



「…そういう高巳もだろう」

「まぁね。光稀さんと同じ理由だよ」

「……」



あ、拗ねた。

ささいな表情の変化でちゃんと感情を読み取ることが出来るようになるには、そう時間はかからなかった。
きっとそれは、彼女のことをかなり前から意識していたから。



「高巳」

「ん?」

「あの場所に行きたい」

「…分かった、行こう」



そう言って彼女の手を握り車に乗り込む。
もう、手を繋ぐ動作も慣れたものになった。

車をとばして着いた先は、もともと今日行く予定だった、初デートの日に行った公園。

なんとなく外に出たくなったから、車のドアを開ける。
夏特有のむっとした暑さが俺たちを包む。



「…あ、」

「なに?」

「ひまわりだ」

「本当だね。…光稀さんってひまわりに似てるかも」

「は?」

「ほら、いつも空を眺めて、真っ直ぐに太陽を見てるし」

「それは私が単純だと言いたいのか?」

「どう深読みしたらそうなるんだよ!」



そう言ってから、深く息を吸う。
スーツの内ポケットから指輪を取り出した。

ずっと前から決めていた。
付き合ってからちょうど二年目の今日、プロポーズをすると。
言葉はこれしか思い浮かばなかった。

彼女と向き直り、目を見つめて、言葉を吐き出した。



「絶対君にF-15を降りてくれなんて言いません。だから結婚してください」



絶対に、大輪の華である君を折らせたりしないから。



ひまわり



天空を夢見て太陽を仰ぐ
気高き大地の大輪の華
 

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