短編・御礼
□梅
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はぁ、と息を吐くと、白くくもったあとすぐに消えた。
「秋庭さん?」
未だに塩の撤去が終わっていないため、真奈の目にはまだ白い包帯がきつく巻かれている。
「あぁ、悪い」
「なにが見えますか?」
「辺り一面が雪に覆われているな」
「昨日から急に冷え込みましたから」
「それと、…」
「それと?」
あの形、あの色は。
「梅が咲いてる」
「梅ですか!?」
「あぁ」
白銀の世界に、一本だけ。
小さいながらもその存在は大きく。
赤い花は風を受けて揺れていた。
「梅、かぁ…」
そう言って真奈は笑う。
その顔を見て思った。
梅に似ている、と。
ただ小さいだけだと思っていたらそうでは無かった。
ぼんやりしているように見えても、意外としっかり見ている。
自分の意見は滅多に曲げない。
「あと1年」
「え?」
「多分あと1年もかからない」
「…」
「そのときに、また見に来よう」
「…はい!」
梅
白い冬を紅く染めあげた
ひそやかに奥ゆかしく