短編・御礼
□エーデルワイス
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彼女に初めて会ったのは勤務中の事だった。
次世代輸送機についての要望をヒアリングしに来たらしい。
多分、自分と同じ世代。
それだけ考えて、次の瞬間には仕事の頭に切り替わっていた。
気にならなかった訳ではない。
ただ、あの時の自分は他の事に気を配れるほどの余裕が無かった。
彼女を気にするまで、時間はそうかからなかった。
気になってから約一ヶ月後の、彼女の言葉に完全に落ちた。
『官の要望を統一してください。官の要望が揺らいでいたら戦えません』
なんと真っ直ぐに自分を見つめて言うのだろう。
驚くと同時に引っ掛かる部分があった。
彼女は今、何と言った?
―――『戦う』と?
嫌な予感はした。
しかし、止める事は出来なかった。
俺が、言い出した事だから。
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「高科さん!」
自分の名を呼ばれ振り向くと、そこにはさっきまで考えていた彼女がいた。
「絵里さん、…それは?」
「あそこで咲いてるのを見つけたの。綺麗にされてたから誰かが手入れしてるのかも」
彼女の手には、一輪の銀色の花が握られていた。
真っ直ぐに上を向いているその花は、あの時の彼女を連想させた。
「高科さん?何笑ってるの?」
「いや…思い出し笑い」
「ふーん?」
「疑ってる?」
「高科さんでもそんな事あるんだと思って」
「どういう意味だよ」
「なんでもない」
そう言って笑う彼女につられて自分も笑う。
「絵里」
「ん?」
「いい加減名前で呼んでくれ」
「…努力します」
あの時の格好良さはどこへやら。
でも、そういう彼女も好きだと思っている自分は相当溺れている。
エーデルワイス
気高い勇気は星のあかり
雪によく似た銀色の花