短編・御礼
□カーネーション
1ページ/1ページ
私は、いつも不安だった。
不安で、不安で。
毎日無意味に携帯を開いては落胆する。
そして、その度に思い出すのだ。
『もし我慢できなくなったら、俺と連絡取れなくても聡子が別れたいときに別れたことにしていいよ』
私は別れるつもりなんてない。
けれど、やはり不安で。
ねぇ、私は、私達は、まだ付き合ってるの?
+++
やっと陸地に着いた。
くたくたになった体に鞭打ち、外に出る。
久々の外。
空は青く、どこまでも澄んでいた。
とりあえず聡子にメールを送る。
甘いものが食べたい。
それから、花を買おう。
あ、その前に風呂だな。
やらなきゃいけない事をやってから、聡子に会いに行こう。
そう考えると、自然と足取りは軽くなった。
+++
花屋に入ると、色とりどりの花が自分を主張するように並んでいた。
赤、青、黄、ピンク、白、オレンジ。
近くにあった花を見る。
…ピンクのカーネーション。
赤のカーネーションと言えば母の日のイメージしかないが、ピンクのカーネーションは聡子にぴったりだと思った。
気が付けば俺はその花を買っていた。
その足のまま彼女の家に向かった。
+++
インターホンが来客を告げた。
相手はもう分かっている。
ドアを開けるとそこには、ずっと待っていた彼の姿。
ずい、と花束を差し出される。
「え、」
「あげる」
「あ、ありがと」
とりあえず感謝の言葉を述べつつピンクのカーネーションを貰う。
それごと彼に抱きしめられた。
「…ごめん」
「何が?」
「凄く、不安そうな顔だったから」
「……」
図星なので黙り込む。
ここで虚勢を張っても仕方がない。
「待っててくれてありがとう」
「当たり前でしょ!だって、」
私はあなたの彼女だから。
その言葉を言う前に唇をふさがれた。
あぁ、彼が好きだ。
どうしようもなく、好き。
カーネーション
今でも愛しているのだと
私を信じて想いを贈る