短編・御礼
□君だけに『愛してる』
1ページ/3ページ
…困った。とても困った。
無意味に部屋の中を歩き回る。
が、良い案など浮かんでこない。
やはりアレをするしかないのか…!?
事の発端は一週間前まで遡る。
+++
あと二週間で郁の誕生日。
プレゼントは何がいいか。
本人に直接聞いてみるのも良いが、やはりここはさりげなく調べてプレゼントをあげたい。
まぁあの郁の事だ、簡単に分かるだろう。
そう思って高をくくっていたのだが――…
「笠原ですか?特には言ってないと思います」
「そうか…ありがとう」
「いえいえ」
郁とよく話している同僚の女性に話を聞いているが、全くそういう事は言っていないようだ。
柴崎にも「あまり聞きませんね」と言われた。
…これは不味い。
小牧にもアドバイスを貰ったが、どれもパッとしない。
本当にどうしようかと思っていたその矢先に、柴崎からメールがきた。
『ドラマ「理想の恋人」の第12話を見て笠原が「いいなー」とつぶやいてます』
少しでもヒントになる可能性があるなら、と思って内容を聞く。
『@100本のバラ
A生クリームのホールケーキ
B普段は言わない愛の言葉』
…何の嫌味だこれはッ!
こんな事出来る訳ないだろ!!
そう心の中で突っ込むが、状況は変わる訳が無かった。
そして、冒頭に戻るのである。
+++
「笠原、誕生日おめでとう!」
「うん、ありがとう!!」
朝からたくさんの人に声をかけられた。
篤さんからは昨日、「仕事が終わったあとに外食しよう」と誘われている。
…なぜか仏頂面だったが。
何にせよ、篤さんと一緒に誕生日を過ごせるのが一番楽しみ。
自然に顔がほころぶ。
「笠原さん、幸せオーラを撒き散らしてるね」
「はい!」
「顔にやけてるぞ」
「手塚うるさい」
「……(理不尽だ)」