短編・御礼

□君だけに『愛してる』
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…困った。とても困った。

無意味に部屋の中を歩き回る。
が、良い案など浮かんでこない。
やはりアレをするしかないのか…!?

事の発端は一週間前まで遡る。



+++



あと二週間で郁の誕生日。
プレゼントは何がいいか。
本人に直接聞いてみるのも良いが、やはりここはさりげなく調べてプレゼントをあげたい。
まぁあの郁の事だ、簡単に分かるだろう。

そう思って高をくくっていたのだが――…



「笠原ですか?特には言ってないと思います」

「そうか…ありがとう」

「いえいえ」



郁とよく話している同僚の女性に話を聞いているが、全くそういう事は言っていないようだ。
柴崎にも「あまり聞きませんね」と言われた。

…これは不味い。


小牧にもアドバイスを貰ったが、どれもパッとしない。
本当にどうしようかと思っていたその矢先に、柴崎からメールがきた。



『ドラマ「理想の恋人」の第12話を見て笠原が「いいなー」とつぶやいてます』



少しでもヒントになる可能性があるなら、と思って内容を聞く。



『@100本のバラ
 A生クリームのホールケーキ
 B普段は言わない愛の言葉』



…何の嫌味だこれはッ!
こんな事出来る訳ないだろ!!

そう心の中で突っ込むが、状況は変わる訳が無かった。

そして、冒頭に戻るのである。



+++



「笠原、誕生日おめでとう!」

「うん、ありがとう!!」



朝からたくさんの人に声をかけられた。

篤さんからは昨日、「仕事が終わったあとに外食しよう」と誘われている。
…なぜか仏頂面だったが。

何にせよ、篤さんと一緒に誕生日を過ごせるのが一番楽しみ。
自然に顔がほころぶ。



「笠原さん、幸せオーラを撒き散らしてるね」

「はい!」

「顔にやけてるぞ」

「手塚うるさい」

「……(理不尽だ)」
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