短編・御礼

□君に、溺れる
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「篤さーん」



何だ、この可愛い生物は。

小牧と久々に2人で飲んで帰宅すると、そこにはいつもより少しお洒落した郁が、…できあがっていた。



「お前、柴崎と飲んでたんじゃないのか」

「少し前に帰ってきましたー」



そう言ってふにゃっと敬礼。
敬礼にふにゃっという擬音語は合わないのだが、実際そうとしか言い様がなかった。

とりあえず水を飲みにキッチンへ行く。
と、後ろから郁がついてきた。



「…郁?」

「なんですかー?」



語尾を伸ばす話し方は馬鹿っぽく見えてしまうから好きではなかったのだが、郁がやると話は別だ。
めちゃくちゃ可愛い。
…だが。



「そんなにくっつかれると水が飲めない」

「だって離れたくない…」



そう言って上目遣いをする郁は、凶悪的に可愛いかった。

本当は今すぐにでも襲ってやりたい所だが、明日は訓練日。
郁に悪いと思い我慢する。

ソファーに座ると、こちら側をむいて郁が膝の上にのってきた。
自分と同じシャンプーのかおりがふんわりとする。
…まずい、これ以上近づかれると自制がきかなくなる。



「郁、離れろ」

「嫌ですー」

「郁」

「やだ」



もういろいろと諦めて膝の上にのせておく。
抱きつかれるが、耐える。

耐えろ、堂上篤。
明日の彼女のために。



「好き、好き。大好きー」



…明日が訓練日だなんて、そんなもん、



「知るか!」

「んー?」

「お前が悪いんだからな」



それだけ言って、長い長いキスをした。



〔君に、溺れる〕



御題元・Silence

→後書きという名の懺悔+おまけ
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