短編・御礼

□5月
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「いい天気ですね!」

「あぁ」



綺麗に晴れ渡った空を見上げつつ、ぼんやりと返事をする。
住宅街でこんな風にずっと空を見上げつつ歩くのは危険だが、今日くらいいいじゃないか。
爽やかな風がシャツを揺らす。
暑くもなく寒くもなく、適温な今日はお散歩日和だ。



「あ、篤さん!あれ見てください!」

「どれだ?」

「あれですあれ!」



彼女がはしゃぎながら指をさす方向には、鯉のぼりが気持ちよさそうに空を泳いでいた。
黒、赤、青とはっきりと鮮やかな色で存在を主張する彼らは、揃って同じ方向を見据えている。



「いいなぁ…」

「ん?」

「とっても気持ちよさそう」

「そうだな」

「…私も、子供ほしいなぁ…」

「ッ…」



なんてことを言ってくれるんだ、お前は。
あまりにも予想外の発言をされ、強く心が揺さぶられた。
こんなところで、俺に欲情させるなアホゥ。



〔恋のぼり〕



((鯉のぼりのように、お前への恋心も高く昇っていく))

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