短編・御礼
□6月
1ページ/1ページ
梅雨入りしてから、洗濯物が外で干せない。
そう言って空を見上げる郁の横顔は、どこか陰って見えた。
そんなに外で干せないのは嫌なのか。
「そりゃ嫌ですよ!カラッと晴れて、白いシーツが物干し竿に揺れてるのってとっても素敵じゃないですか」
「あぁ、漂白剤のCMでよく流れてそうな…」
頭の中でそのCMが流れる。
そうしてる間も、彼女の話は続いた。
「それに、干したあとの洗濯物ってお日様の匂いがするし」
またベタなことを…。
彼女はその匂いを頭に浮かべたのか幸せそうに笑った。
窓の外を見ると、さっきより小雨になっている。
どことなく空が明るい気がする。
「もしかしたら止むんじゃないか?」
「え?…あ、ほんとだ。さっきより小雨になってる」
窓を開けて空を見上げる彼女。
そのあどけない表情に、なんだかときめいた。
そう、まるで子供のような。
無意識に右手が動いた。
彼女の頭を優しく撫でる。
一瞬驚いた表情を浮かべた彼女は、すぐに安心した表情に変わった。
もう一度空を見上げる。
〔雨上がりの空〕
(あ、虹!)((可愛いな、まったく…))