短編・御礼
□8月
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「おい」
「なんですか」
「……」
俺の妻である郁がやけに不機嫌であるのはきっと気のせいではない。
今日のお昼からずっとこの状況で、何を言っても冷たい反応しか帰ってこない。
今日明日と、せっかく2日連続の休みを貰ったのに、このままだと残念な休日になってしまいそうだ。
「どうした」
「別に、篤さんには関係ありませんよ」
「…」
関係ない。
そう突き放されて、血の気が引いた。
郁、その言葉はお前が思っているよりもキツい。
必死に今日の自分の行動を振り返る。
今日俺は何をして、何を言った?
相手に気付かれないようそっと周りを伺う。
そして、気付く。
近くに置いてあったチラシの山。
そのてっぺんに、黒地に様々な色の光が飛び散る一枚があった。
郁はこれに行きたくて、けど俺はそれに対して乗り気ではない返事をした。
きっと、それが原因。
「郁、すまなかった」
「謝らないでくだ「明日夏祭りに行こう」…」
一瞬驚いた表情をして、それから笑顔で彼女は返事をした。
「……はい!」
〔夏祭りに誘って〕
(篤さん、さっき「夏祭りくらい友達とたくさん行ったろ」って言いましたが、私は篤さんと2人で行きたかったんですよ)(…)