短編・御礼

□9月
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「もう9月ですね」

「だな」



暑さのピークは過ぎたものの、まだまだ日が昇っている時間は長い。
汗を拭いつつ、部屋の窓を拭く。

今日は2人揃っての休みなので、家中の掃除をすることに決めた。
こんなふうに1日掃除をする、と決めないとなかなか細かいところにまで手が回らない。
実際、普段は掃除機をかけて軽く拭き掃除をするくらいだ。

窓のさんを力を込めて拭いていると、ふと時間が気になった。
後ろを振り向き掛け時計を見ると、もう18時近い。

…どうりで、部屋が少し赤っぽい。



「郁」

「あともう少し…!」

「精を出すのはいいことだが、もう18時だ」

「まだ18時じゃないですか…ってえ?18時!?」



慌てて時計を見る彼女。
今日の晩ご飯の当番は郁だ、が。



「…久しぶりに2人でつくるか」

「え、でも当番私…!」

「たまにはいいじゃないか。何を作る気だったんだ?」

「えっと…カレーが食べたいです」

「カレー、な」



昔、掃除をした日の晩ご飯はいつもカレーだったことを思い出した。
家族揃って掃除のあとに食べるカレーは、いつもよりずっと美味しかった。



「なに笑ってるんですか?」

「別に何も、な。奥さん」

「なっ…!」



〔それは夕陽のせい〕

(…むしろなんでお前そんなに顔赤いんだ)(っ!…夕陽のせいです!)(またベタな返しを…)

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