短編・御礼
□笑顔をくれる人
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すみません、誰か今の状況になった訳を教えて下さい。
もうすぐ篤さんの誕生日。
どこかに食べに行こうと言うと、篤さんに
「それより郁の料理が食べたい」
と言われ、前からこっそりと友人に料理を教えてもらっていた。
そして今日は誕生日。
早く仕事を終わらせ、1人で料理を作った。
失敗せずに料理は完成。
安心していつの間にかソファーで寝てしまった。
そこまでは覚えている。
が。
「なぜ篤さんが、」
私を抱き枕のようにして寝ているのか。
すぐ近くにある顔を見上げる。
そこには、眉間にシワが無いせいか普段より幼く見える篤さんの顔があった。
幸せそうな顔だなぁ。
最近訓練多いわりに休日は少なかったから疲れが溜まってたんだろうな。
もう少し家事やれば良かった。
そこまで反省してからハッとする。
今何時!?
近くに置いてあった自分の携帯に手を伸ばす。
22:46。
もうすぐ篤さんの誕生日が終わっちゃう!
とりあえず篤さんを起こさなきゃ。
心の中で謝りつつ篤さんの身体を揺さ振る。
「起きて、篤さん」
ゆっくりと目蓋を上げる彼。
暫く私の顔を見て一言、
「…今、何時だ」
「22:47です」
「もう少し寝かせろ」
「はい。…ってえぇッ!?」
あわてて再び起こそうとするが、すでに熟睡したらしく、全く目を覚まそうとしなかった。
「…仕方ない、か」
料理は明日の朝にまわそう。
腐りそうな物は作ってないから大丈夫。
プレゼントはすでに渡したし。
そこまで考えて自分も意識を手放した。
〔笑顔をくれる人〕
((寝ている彼女らの顔はとても幸せそうで、笑っているようだった、という事実はだれも知らない))
御題元・Silence