短編・御礼
□絵に描いたような無能
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「…誰か、笠原呼んで来い」
「はい!」
近くにいた部下の一人が呼びに走る。
周りの奴らももう慣れたもので、誰が笠原を呼んでくるのか当番制になった。
またミスしやがって。
これで一週間連続だ。
「お呼びでしょうか」
「おまえはいつになったらミスしなくなるんだ…」
わざと大きくため息をつくが、本人は全く気にせずにこっちを見て首をかしげている。
「えっと…何かしましたか、私」
「しでかしまくりだ!30分以内にやり直せ!!」
「は、はいっ!」
わざわざ敬礼までしてさっていく彼女。
その後姿を見送ったあと、声がかけられた。
「相変わらずですね、彼女」
「…どうしてこんな所におられるのですか、社長」
「笠原さんがどうなったか気になりましてね」
「見ての通りです」
「とにかく、彼女を頼みましたよ」
「はい」
社長は俺のほうを見てにっこりと笑ってから車椅子を器用に動かし去って行った。