短編・御礼
□色恋沙汰に惑わされ
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家に帰って、電気をつける。
ラフな格好に着替えてそのままベットへ直行。
ボスン、と仰向けになり、手を天井にかかげる。
中指にきらりと輝く指輪を見て深いため息をついた。
「柴崎に忠告されていたのにね」
ぽつりと呟き、自嘲気味に笑った。
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「笠原ァ」
「柴崎、どうしたの?」
「あんた、スパイとして稲嶺グループで働くって本当?」
「…なんでそれ、」
「あたしを誰だと思ってんの。でも何であんたが、」
「社長によると私のほうが、意外性があってばれにくいだろうし、敵の油断も誘えるだろうだってさ」
「……」
「……」
「それ、本当?」
「うん、本当」
「…ふーん、まあいいわ。じゃああたしからひとつ忠告」
「ん?」
「絶対に好きな人をつくっちゃ駄目」
「…わかった」
彼女が部屋から出て行ったあと、心の中で謝る。
ごめん、柴崎。