短編・御礼

□血が何よりも似合う夜
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今日で、私が二重スパイになるという覚悟を決めた日から3回目の報告会がある。

あの日から、私に対する皆の対応は変わった。
…そりゃそうだ、私は彼らを裏切ったのだから。
けれどその中でも、特殊部隊の人たちだけは変わらずに接してくれている。
それだけが私の今の心の支えだ。

いつも通り、胸ポケットにはUSBメモリ。
これが私を守ってくれる。


ふと見上げると、そこには怪しげに月が輝いていた。
行く前に言われた篤さんの言葉がよみがえる。



「嫌な予感がする。…気をつけろ」



+++



いつもの部屋に入ると、さっそく報告会が始まった。
玄田隊長から許可がおりた内容だけを報告すると、いつもは黙ったままの社長が口を開いた。



「最近流してくれる情報が少ないようだが?」

「そうですか?まあ最近そういうの厳しくなってきているので…」



言葉の途中で、後頭部に冷たい何かがあてがわれる。
――――銃。



「裏切ったな」



地を這うような声。
身体がすくむ。
手足が震える。
そして、



「撃て」



その言葉の直後、銃声がひとつ。
そこで私は意識を失った。



〔血が何よりも似合う夜〕



((銃声が終わりと始まりを告げた))

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