短編・御礼

□私に救いはいりませんでした
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泣きながら思う。
幸せすぎて怖い、と。

幸いにも事件の死亡者は0。
重役は全員逮捕、勿論会社は潰される。
篤さんの言う通りなのだ。
だからこそ、怖い。

私は、大勢の人を、裏切ったのに。


頭の上に、手がのせられた。
篤さんがため息をつく。



「おまえって本当に顔に出るな」

「…え?え!?」

「今お前が考えてたことわかるぞ。『私はたくさんの人を裏切ったのに』」

「な、」

「だから顔に出てるって言ったろうが」

「……」

「言っとくけどな、」



ぐっと体を引き寄せられる。
温かい。
篤さんの心臓の音が聞こえる。



「俺はお前が裏切ったなんて思ってない。…いや、俺達は、か」



達?
首を傾げると同時に体を離される。
直後、ドアが開いた。



「そういう事」

「小牧教官…」



そのあとに特殊部隊の人が大勢入ってきて、それぞれが声をかけてくれる。

最後に柴崎が入ってきた。
…え、



「柴崎!?」

「笠原うるさい」

「なんでここに…」

「いろいろあったのよ。とりあえず…」



ぎゅっと抱きつかれる。
いつもの柴崎じゃないみたいで動けないでいると耳元で囁かれた。



「ありがとう」



その言葉におさまりかけていた涙が復活した。



「幸せになりなさい」



そう言うと柴崎は私の体をはなした。

…あぁ、神様。



〔私に救いはいりませんでした〕



(言ったろう?)(はい、篤さん)(おーい、二人だけの世界に入るなーまだ大事な話が…おい小牧耳を引っ張るな)(はいはい、玄田隊長行きますよー)

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