短編・御礼
□冷めない熱
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窓から漏れている光で、彼女が先に帰っていることを確認する。
それだけで足取りが軽くなった。
自分を待っていてくれる人がいるだけでこんなに気持ちがあたたかくなることを、結婚して初めて知った。
玄関のドアを開けると、その音で気付いたらしい彼女がパタパタとスリッパの音をたてて走ってくる。
…一瞬しっぽが勢いよく振られているような幻覚が見えた。
疲れているのか、俺は。
「お帰りなさい、篤さん!」
思考、中断。
疲れを吹き飛ばすような底抜けに明るい笑顔を向けられ、こちらもつられて笑顔になる。
「ただいま、郁」
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食後のコーヒーを持ってソファーに座ると、彼女も飲み物を持って隣に座った。
どうやら柚子茶らしい。
柑橘系の良い香りが周りを満たす。
「良い香りだな、それ」
そう声をかけると、彼女はコップをこちらに差し出した。
「飲みますか?」
「あぁ、貰う」
一口含むと、口いっぱいに柚子の味が広がる。
柚子の皮も入っており、なかなか美味しい。
「美味しかった、」
ありがとう。
そう続けようとして郁の顔を見ると、ほのかに赤く染まっていた。
自分がさっきした行動を思い浮かべて納得する。
「間接キス、か?」
「…!」
一瞬にして茹でダコ状態になる。
相変わらずの反応だ。
「キスなんて毎日してるだろ?」
「そっ…そうですけど!」
ついに堪えきれなくなったのか、顔を俯かせる。
しかし、俺はそれを許さなかった。
顎を指先でつかみ、顔をあげさせる。
恥ずかしさから視線を彷徨わせる様子に少し笑う。
「ちょ、何笑ってるんですかー!」
「悪い悪い。お前が可愛すぎて、な」
「…!!」
これでもか、というくらい顔を赤く染める郁。
未だに耐性がつかない彼女が可愛くて仕方がない。
可愛い。
その言葉を口に出すかわりに彼女の唇を奪った。
〔冷めない熱〕
(柚子味だな)(もう篤さんお願いだから喋らないで!私の心臓が破裂しちゃうから!)
御題元・Silence
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VOICEの未希様に捧げます。
新婚・ベタ甘。
そう呟きつつ書いていたはずなのに途中何度もギャグの方向へ行ってしまい、涙目になりつつ「私は何か悪いことしたのか…!?」と呟いてました。
因みにギャグの方は、
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柑橘系の良い香りが周りを満たす。
「最近視線を感じることが増えたな…」
「え!?まさか…ストーカー!?」
「んな訳あるかッ!」
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確か視線を感じるのは2人が余りにも幸せオーラを出していたからで、独身者に食い入るように見られていた、みたいな考えだったはずだけどいざ書いたら上のやり取りになったので没。
今更だけどタイトルと合ってないです。
いつもの事か。←
未希様、何かありましたら何度でも書き直します!
ぜひ受け取ってください、私の愛を!!←
これからよろしくお願いします(^^)v