短編@
□吐き出す怪奇音
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ガガガガガ、と機械的な音と「ギャ―――――――ッ!!」と女の悲鳴とは思えないような声が隣から絶えず聞こえてくる。
もう我慢の限界だった。
「止めろ笠原!」
そう怒鳴ってから拳骨をくらわせる。
「痛ッ!今本気で殴りませんでしたか!?」
涙目で言い返してくる笠原に怒鳴り返す。
「隣からそんな奇怪音が聞こえてきたら仕事に集中できんわッ!」
その言葉にグッと詰まりながら「でも…」と呟く。
「でももだってもあるかッ!」
「う―…」
「…ったく、貸せ」
「……何をですか?」
「雑巾に決まってるだろう」
「何するんですか?」
「……とにかく貸せッ!」
「はいッ!!」
敬礼までつけて渡された雑巾は、やはりと言っては失礼だが酷い有様だった。
ミシンにセットし縫い始める。
「…教官」
「何だ」
「…何で私より上手なんですか」
「お前が下手すぎるだけだろう」
「確かに私は下手ですけどッ!でもそこらの女子より上手じゃありませんか!?」
「知るかんなもん」
隣でギャーギャー喚く笠原に「ほら」と渡す。
「終わったぞ」
「…ありがとうございます」
受け取ってから雑巾を睨めつけた笠原を見て、思わず笑ってしまった。
[吐き出す怪奇音]
(そんなに睨んでたら雑巾に穴あくぞ)(なッ!)
御題元・空をとべる5つの方法