短編@
□虹のふもとに眠る君
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今日は公休日。
久々にゆっくり体を休められると思ったら、郁が「やばい!返却日今日だった!!」と言ったので、散歩がてらに図書館に行く事になった。
そして、彼女が図書を返却しに行ってから30分が経とうとしていた。
…遅い。
いつもなら返却した後必ず俺の所に来てから借りる本を探すはずだ。
何かトラブルにでも巻き込まれたのだろうか。
心配になってカウンターへ向かうと、そこには柴崎がいた。
「柴崎、い…笠原知らないか?」
「笠原ですか?30分ぐらい前に図書を返却しに来ましたけどその後は…」
「そうか、わかった」
「笠原に何かあったんですか?」
「いや、なんでもない」
そう言ってその場から立ち去る。
…どこに行ったんだアイツは!?
叫びだしたい衝動をなんとか抑え、訓練速度で歩く。
多分まだ図書館内だろう。
そう思って窓の方を見る。
そこには、虹が見えた。言葉もなく立ち尽くす。
そして。
まさか、あいつ…!!
庭へと走り出した。
図書館内からは死角にある木陰で、彼女は眠っていた。
俺からみると、そこはちょうど虹のふもとに当たる場所で。
すごく綺麗で、ずっと眺めていたくなった。
けれど、だめだ。
「…おい、郁。起きろ」
「うーん……、あれ、篤さん!?」
「お前ってやつは…」
「なんで私…あ!虹が凄く綺麗で、気が付いたら走り出してて…」
「もういい、分かった」
「すみません…」
[虹のふもとに眠る君]
(もういいと言っただろ。それに、良い物見させてもらったしな)(…?)