短編@

□理想の恋愛
1ページ/1ページ

「篤さん!私今日からおしとやかな女性になります!!」

「……はあ!?」



思い詰めた顔で話しかけてきたと思えば、こんな事を言われた。



「ちょっと待て、急に何なんだ!?」

「とにかく絶対になりますから!」

「おい、郁!」



彼女はそう宣言すると、玄関を飛び出していった。



+++



「ククッ…そう、笠原さんが…クッ」

「笑うな!こっちは真剣なんだ!!」



相談する相手を間違えたか。
今頃になって後悔するが、もう遅い。



「でも本当に何があったんだろうね?」

「…ああ。全く訳がわからん」

「柴崎さんに聞いてみたら?」

「柴崎か…」



想像するだけで嫌になる。

今の話をもう一度しなければならないのか。
しかも、あの柴崎に。

からかわれるのが目に見えている。



「でもそれ以外に分かる人いないと思うけど」

「分かった、電話する」



そういって、嫌々ながら電話をかけた。



『…はい、堂上教官?』

「柴崎か?実は…」



事情を話すと柴崎は『ああ…』と呟いた。



「分かるのか!?」

『多分ドラマの影響だと。今流行っている“理想の恋人”って話なんですけど』

「…は?」

『そのドラマに出てくる女性が凄く格好良くて、笠原がずっと私もこんな風になれたら…って呟いてました』

「そうか、だから…」

『でも笠原は知らないと思うんですけど、私たちの周りでは“笠原のような恋愛が理想!”って言ってる人が多いんですけどね』

「……」

『あ、そろそろ行かないといけないんで、それでは…』

「あ、ああ…」



通話が終わると隣で小牧がふきだした。どうやら話を聞いていたようだ。



「理想の恋愛、か」

「意味がわからん」




[理想の恋愛]




(よかったじゃん、理想の恋愛って言われて)(…うるさい)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ