短編@
□理想の恋愛
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「篤さん!私今日からおしとやかな女性になります!!」
「……はあ!?」
思い詰めた顔で話しかけてきたと思えば、こんな事を言われた。
「ちょっと待て、急に何なんだ!?」
「とにかく絶対になりますから!」
「おい、郁!」
彼女はそう宣言すると、玄関を飛び出していった。
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「ククッ…そう、笠原さんが…クッ」
「笑うな!こっちは真剣なんだ!!」
相談する相手を間違えたか。
今頃になって後悔するが、もう遅い。
「でも本当に何があったんだろうね?」
「…ああ。全く訳がわからん」
「柴崎さんに聞いてみたら?」
「柴崎か…」
想像するだけで嫌になる。
今の話をもう一度しなければならないのか。
しかも、あの柴崎に。
からかわれるのが目に見えている。
「でもそれ以外に分かる人いないと思うけど」
「分かった、電話する」
そういって、嫌々ながら電話をかけた。
『…はい、堂上教官?』
「柴崎か?実は…」
事情を話すと柴崎は『ああ…』と呟いた。
「分かるのか!?」
『多分ドラマの影響だと。今流行っている“理想の恋人”って話なんですけど』
「…は?」
『そのドラマに出てくる女性が凄く格好良くて、笠原がずっと私もこんな風になれたら…って呟いてました』
「そうか、だから…」
『でも笠原は知らないと思うんですけど、私たちの周りでは“笠原のような恋愛が理想!”って言ってる人が多いんですけどね』
「……」
『あ、そろそろ行かないといけないんで、それでは…』
「あ、ああ…」
通話が終わると隣で小牧がふきだした。どうやら話を聞いていたようだ。
「理想の恋愛、か」
「意味がわからん」
[理想の恋愛]
(よかったじゃん、理想の恋愛って言われて)(…うるさい)