短編@
□愛しき人よ
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「ふんふーん、ふんふふーん♪」
台所から鼻歌が聞こえる。
それを聞いて頬を緩める自分。
今日は訓練じゃなかったからよかったものの、あいつの事だから何かやらかしそうだな…。
「…郁」
「何ですか?篤さん」
「お前、嬉しいのは分かるが今から仕事なんだぞ?」
「わかってますよー!」
「ならいいが…」
今日は、俺と郁の結婚記念日。
残念ながら休みではないが、業務が終わった後にどこかに食べに行こう、という話になっている。
場所は俺が決めることになっていたので、何度か下見に行き最も気に入った店にした。
「もう支度はできたか?」
「大丈夫です!」
「じゃあ行くか」
「はい!」
今日の郁は物凄く浮かれている。
ぼーっとしていると思えば急にニヤけて、それが済むと今度は鼻歌を歌いだす。
見てるこっちはたまったもんじゃない。
+++
「小牧教官、おはよーございます!」
「笠原さん、おはよう。…楽しみなのは分かるけど、少しはおさえてね?…ククッ」
さっそく小牧が上戸に入ったのを見て、思わず顔をしかめる。
周りを見ると、特殊部隊の奴等がこっちを見てニヤニヤしていた。
その中には勿論隊長も居た。
…目が輝いて見えるのは俺の気のせいか?
「笠原、そんなに楽しみか?」
「当たり前じゃないですか隊長!」
「そうかそうか、そりゃ良かった」
ガハハ、と豪快な笑い声をあげつつ隊長室に入って行く隊長を見て、俺は嫌な予感がした。