短編@

□愛しき人よ
1ページ/3ページ


「ふんふーん、ふんふふーん♪」



台所から鼻歌が聞こえる。
それを聞いて頬を緩める自分。

今日は訓練じゃなかったからよかったものの、あいつの事だから何かやらかしそうだな…。



「…郁」

「何ですか?篤さん」

「お前、嬉しいのは分かるが今から仕事なんだぞ?」

「わかってますよー!」

「ならいいが…」



今日は、俺と郁の結婚記念日。

残念ながら休みではないが、業務が終わった後にどこかに食べに行こう、という話になっている。
場所は俺が決めることになっていたので、何度か下見に行き最も気に入った店にした。



「もう支度はできたか?」

「大丈夫です!」

「じゃあ行くか」

「はい!」



今日の郁は物凄く浮かれている。

ぼーっとしていると思えば急にニヤけて、それが済むと今度は鼻歌を歌いだす。

見てるこっちはたまったもんじゃない。



+++



「小牧教官、おはよーございます!」

「笠原さん、おはよう。…楽しみなのは分かるけど、少しはおさえてね?…ククッ」



さっそく小牧が上戸に入ったのを見て、思わず顔をしかめる。

周りを見ると、特殊部隊の奴等がこっちを見てニヤニヤしていた。
その中には勿論隊長も居た。

…目が輝いて見えるのは俺の気のせいか?



「笠原、そんなに楽しみか?」

「当たり前じゃないですか隊長!」

「そうかそうか、そりゃ良かった」



ガハハ、と豪快な笑い声をあげつつ隊長室に入って行く隊長を見て、俺は嫌な予感がした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ