短編@

□愛しき人よ
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午前中は何もされなかった。

さらに気を引き締める。

あの隊長の事だ、必ず何かするだろう。


そして、その当たって欲しくない考えは当たる事になる。


いつものメンバーで昼食をとり、仕事があるから先に部屋に帰ってくるとソコにソレはあった。



『王子様・お姫様、結婚一周年おめでとう!!王子様よ、永遠に…』

「何だコレは―――ッ!?」



叫びつつ猛ダッシュし勢いよく横断幕を剥ぎ取る。
また隊長の豪快な笑い声が聞こえた。



「なかなか大変だったんだぞ。いつ堂上たちが戻って来るかわからんからな、ビクビクしながらコレを書いてもらったんだ。なかなか達筆だろ?」

「知りませんよそんな事!」

「まぁそう言うな。上手く出来たから進藤に特殊部隊全員分コピーしてもらっておいた。勿論お前の分もあるぞ」

「要りませんッ!」

「すでにお前の机に貼っておいたからな?」

「………ッ」



机に駆け寄るとセロハンテープで丁寧にとめられてあった。
周りを見ると、本当に全員の机に貼られていた。

もう怒鳴る気力もなく、諦めて自分の机だけ剥がしておいた。



「笠原ただいま戻りましたー!…あれ、堂上教官、何かあったんですか」

「……机見ろ」



短い言葉で返すと、郁は素直に机を見た。
そして約二秒後、部屋だけでなく図書館の受付まで響き渡る悲鳴が繰り出されたのであった。



「ギャ―――――――――ッ!!」



それは誰もが耳を塞ぎ、それでも防ぎきれなかった。
ある耳の良い隊員はこの悲鳴で気を失ってしまうほどの破壊力をもっていた。



「黙れど阿呆が!!」



思わず反射的に手がのびた。
ガッという鈍い音と共にその悲鳴は終わった。



「痛ァー!何するんですか教官ッ!!」

「お前の悲鳴は破壊力がありすぎだ!ちょっとは抑えろ!」

「だってこれ見たら悲鳴くらいあげます!」

「それは痛いほどわかるがお前の悲鳴は一般的じゃない破壊力を持っているんだ!」

「ううぅぅ…」



郁は唸りつつもスミマセン…と呟いた。
その姿でさえいとおしいと思う俺は末期なのかもしれない。

何て声をかけようか迷っていると、玄田隊長が言った。



「堂上、笠原!隊長命令でお前等2人は今日の午後の業務を休みにする!」

「「はいッ!?」」

「聞こえなかったか?隊長命令だ!」

「「…はい」」



玄田隊長の心遣いに感謝しつつ敬礼し、くるりと踵をかえして部屋を後にした。
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