短編@

□2人の結末
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「結婚しようか」



いつものような笑顔。

返事はもう決まってる。
ずっと前から。



+++



「…夢、か」



ゆっくりと瞼を動かす。

見慣れた天井、時計に目をやる。



「おはよう、まりえちゃん」

「!…小牧さん」

「今日は急に休暇がとれたから来たんだけど…予定とかある?」

「無いです」



あったとしても無理にあける。
実際には無いけれど。

それより今の私の状況を考える。
寝起きで髪はボサボサ、普段と同じパジャマ姿で化粧など全くしてない。
これは愛しい彼氏に見てほしい格好ではない。



「…まりえちゃん?どうしたの?」



思わず布団に潜り込むと、小牧さんはその布団を私から取り上げた。



「だって今、パジャマ…」

「大丈夫、かわいいよ」

「……ッ」



顔を赤くする私を見て、優しく微笑みながら髪を撫でられる。



「と、とりあえず準備するんで下で待っていて下さい!」

「うん、わかった」



そう言うと彼は楽しそうにドアを開けて階段を降りていった。
未だにボーっとしてる自分に活をいれて準備にとりかかった。



+++



外に出ると、小牧さんは空を見上げていた。



「…小牧さん?」

「まりえちゃん準備できた?じゃあ行こうか」



そういって手を出させる。
私はその手を握り、小牧さんの後をついていく。



「今日はどこに行くんですか?」

「悪いけど、俺の買い物に付き合ってほしいんだ」

「良いですよ。何を買うんですか?」

「堂上がもうすぐ誕生日なんだ。」

「わかりました」



そこから電車に乗り、大きめのショッピングモールに入った。

休日のため人が多く何度か小牧さんとはぐれそうになり、そのたびに小牧さんは私の手を強く引いてくれた。



+++



「ちょっと休憩しようか」

「はい…」



人混みが苦手な私は思ったより体力を消耗していた。
小牧さんが顔を覗きこんでくる。



「大丈夫?…ごめんね、こんな所に連れてきちゃって」

「いえ、私こそすみません…」

「とりあえず一度外に出て、どこか喫茶店に入ろう」

「はい」



+++



静かな喫茶店があったのでそこに入る。
中にはお客さんが数人まばらに居るだけだった。



「そういやさ」



唐突に小牧さんが口を開いた。



「今朝、夢みてたの?」

「…?」

「起きたときに呟いてたから」

「はい、見ましたね」



あれは、私が小牧さんからプロポーズをされる夢だった。



「どんな夢だったの?」

「えーっと…」

「俺に言えないような夢?」

「……はい」



恥ずかしくて言えません。
そう心の中でつぶやく。



「夢ってさ、自分の望みが反映されるんだって」

「そうなんですか?」

「うん。まぁ俺も本で読んだだけだから本当かどうかは知らないけれど」

「…小牧さんと一緒にいる夢でした」

「俺と?」

「はい。ずっと一緒にいる夢です」



結婚するという事はそういう意味だから、あながち間違ってはいないはずだ。

なかなか返事が返ってこないので心配になる。



「小牧さん?」

「…まりえちゃん」



いつになく真剣な表情で私を呼ぶ彼。
少し首をかしげる私に、彼は囁いた。



〔2人の結末〕



(ずっと、一緒にいよう。ずっと、ずっと)(…はい!)
 

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