短編@
□2人の結末
1ページ/1ページ
「結婚しようか」
いつものような笑顔。
返事はもう決まってる。
ずっと前から。
+++
「…夢、か」
ゆっくりと瞼を動かす。
見慣れた天井、時計に目をやる。
「おはよう、まりえちゃん」
「!…小牧さん」
「今日は急に休暇がとれたから来たんだけど…予定とかある?」
「無いです」
あったとしても無理にあける。
実際には無いけれど。
それより今の私の状況を考える。
寝起きで髪はボサボサ、普段と同じパジャマ姿で化粧など全くしてない。
これは愛しい彼氏に見てほしい格好ではない。
「…まりえちゃん?どうしたの?」
思わず布団に潜り込むと、小牧さんはその布団を私から取り上げた。
「だって今、パジャマ…」
「大丈夫、かわいいよ」
「……ッ」
顔を赤くする私を見て、優しく微笑みながら髪を撫でられる。
「と、とりあえず準備するんで下で待っていて下さい!」
「うん、わかった」
そう言うと彼は楽しそうにドアを開けて階段を降りていった。
未だにボーっとしてる自分に活をいれて準備にとりかかった。
+++
外に出ると、小牧さんは空を見上げていた。
「…小牧さん?」
「まりえちゃん準備できた?じゃあ行こうか」
そういって手を出させる。
私はその手を握り、小牧さんの後をついていく。
「今日はどこに行くんですか?」
「悪いけど、俺の買い物に付き合ってほしいんだ」
「良いですよ。何を買うんですか?」
「堂上がもうすぐ誕生日なんだ。」
「わかりました」
そこから電車に乗り、大きめのショッピングモールに入った。
休日のため人が多く何度か小牧さんとはぐれそうになり、そのたびに小牧さんは私の手を強く引いてくれた。
+++
「ちょっと休憩しようか」
「はい…」
人混みが苦手な私は思ったより体力を消耗していた。
小牧さんが顔を覗きこんでくる。
「大丈夫?…ごめんね、こんな所に連れてきちゃって」
「いえ、私こそすみません…」
「とりあえず一度外に出て、どこか喫茶店に入ろう」
「はい」
+++
静かな喫茶店があったのでそこに入る。
中にはお客さんが数人まばらに居るだけだった。
「そういやさ」
唐突に小牧さんが口を開いた。
「今朝、夢みてたの?」
「…?」
「起きたときに呟いてたから」
「はい、見ましたね」
あれは、私が小牧さんからプロポーズをされる夢だった。
「どんな夢だったの?」
「えーっと…」
「俺に言えないような夢?」
「……はい」
恥ずかしくて言えません。
そう心の中でつぶやく。
「夢ってさ、自分の望みが反映されるんだって」
「そうなんですか?」
「うん。まぁ俺も本で読んだだけだから本当かどうかは知らないけれど」
「…小牧さんと一緒にいる夢でした」
「俺と?」
「はい。ずっと一緒にいる夢です」
結婚するという事はそういう意味だから、あながち間違ってはいないはずだ。
なかなか返事が返ってこないので心配になる。
「小牧さん?」
「…まりえちゃん」
いつになく真剣な表情で私を呼ぶ彼。
少し首をかしげる私に、彼は囁いた。
〔2人の結末〕
(ずっと、一緒にいよう。ずっと、ずっと)(…はい!)