短編@
□コントロール不能
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体力の限界なんて、とうに超えている。
でも、止まることなんて出来る訳がなかった。
目の前にいた良化隊員達をまとめて凪ぎ払い、郁を抱き起こす。
「おい…郁!」
「堂上、教官…」
その声に、身体の力が抜ける。
……良かった。
「堂上!」
「分かってる。…郁、走れるか?」
「はい!」
「俺達3人で道をあける。お前は…突っ走れ!」
言い終えると同時に2、3人を投げ飛ばす。
手塚も、小牧も、一斉に蹴り倒した。
――図書館まで、一本の道が出来る。
その道を郁が颯爽と走る。
郁の後を数人の良化隊員が続くが、追い付けるはずがなかった。
なんせあいつは。
――俺の自慢の部下で、自慢の恋人だから。
後ろ姿が図書館に消えた。
「……終わった、な」
「ああ」
無線を取り出して玄田隊長に報告しようとすると、小牧がそれを止めた。
「それは俺がやっとくから、堂上は笠原さんの所にいってあげて」
「……ああ、ありがとう」
+++
図書館の入り口に着くと、ちょうど郁が出てきた。
「―――良くやった」
「…任務中に下の名前で呼びましたよね?」
「……仕方ないだろ。俺が見たときはお前が倒れる瞬間だったからな」
「すみません…」
「お前が謝る必要はない。帰るぞ」
郁の頭を撫でると、郁は嬉しそうに笑った。
その顔を見てため息をつく。
「教官?」
「そんな顔するな。…俺が我慢出来なくなる」
「…!!」
真っ赤になった郁を見て、笑いながら優しく抱き締めた。
〔コントロール不能〕
((俺の心は、もうお前のもの))
御題元・Silence