短編@
□影
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デートの帰り道。
日が傾きだした頃、無意識に呟いていた。
「……影になれたらなー」
「影?なんでだ?」
「影だと身体が細いから」
そういうと篤さんは目を見開いた。
…そんなに変なこと言ったかな?
急に篤さんに抱きしめられた。
「ちょっ…!」
「今でもこんなに細いのに、これ以上細くなってどうするつもりだ」
「女の人が細くなりたいって思うのは仕方ないんです!」
「俺は嫌だ」
「…じゃあ篤さんの影になります」
「またなんで俺の影なんだ?」
「ずっと一緒にいれるから」
「………」
何も言わない篤さんを不思議に思って顔を見ると、複雑そうな顔をしていた。
「篤さん?」
「その気持ちは嬉しいが、俺の影になると…こうやって、」
そう言って手を握られる。
「手を握ったり、触れたり出来なくなるぞ?」
「う――――…」
篤さんとずっと一緒にいたい。
でも、触れないのは嫌。
〔影〕
(…そんな顔するな。俺はずっと傍にいるから)(…はい!)
御題元・Silence