短編@
□心拍数#0822
2ページ/3ページ
俺の心臓が止まる頃には、きっとこの世を満喫し終わっていると思う。
やり残したことなんにもないくらい、君の隣で笑い続けていたと思う。
「篤さん!」
「ん?」
「またそんな渋い顔して…ほら、笑って!」
「…すまん、無理だ」
「ええ!?せっかく写真撮って貰うのに…」
この胸が脈打つうちは君をまだ守っていたい。
生きる意味なんてそれでいい。
もう一つ、もう一つと同じ涙を数えて、俺たちはまたお互いを知る。
「簡単には守らせてくれないが、な…」
「何か言いました?」
「いや、なんでもない。ほら行くぞ」
「はい!」
高鳴る鼓動が伝えてく、重なる音と流れる想いを。
もう離さないと約束しよう、いつでも君が寂しくないように。
「篤さん待ってー!」
「お前、いつの間にそんな所に…」
「だって人混みが…!」
「ほら、手出せ。…絶対離すなよ」
俺の心臓は一分間に、70回の「生きている」を叫ぶ。
でも君と居ると少し駆け足で、110回の「愛している」を叫ぶんだ。
「うわっ!」
「郁!?」
「あのー、篤さん…恥ずかしいです…」
「お前が階段で躓くからだろうが!」
「…心臓の音、滅茶苦茶早いですよ?」
俺と君が出会えたことに何か理由があるとするならば、運命かは分からなくても嬉しいことに変わりはないだろ。
「…うるさい」
「へへ…なんか嬉しいな」
「…そんな顔するな」
「どんな顔ですか?」
いつか俺をやめるときまで、あと何度「好き」と言えるのだろう?
ここに居られることに感謝しよう。
ただ生きていることにありがとう。
「郁…」
「何ですか?」
「ありがとう」
「…急になんですか?!私何かしでかしましたか!?」
「そうじゃない!…ただ言いたくなっただけだ」
高鳴る鼓動が伝えてく、重なる音と流れる想いを。
愛し続けると約束しよう、心臓が止まってしまうまで。
「…私こそ、ありがとうございます」
「あぁ。…愛してる」
「…私も、です!」
→あとがき