短編@
□笑顔が好き
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さっきから、やけに視線を感じる。
…というか、完全に見られている。
「……」
「……」
「…郁」
「…はい?」
「何でさっきから俺を…その…見てるんだ?」
自分で言って恥ずかしくなった。
これで勘違いなら俺はもう…立ち直れない。
「内緒です」
「そうか…って、は?!」
「だから内緒ですって」
「…気になるんだが」
「嫌です、教えません」
「教えろ」
「嫌。」
そこまで拒絶されるともう俺は何も言えなくなる。
とりあえず今日あった事を思い出すが、心当たりは全くない。
郁を見るが、郁はこっちを見ているだけで何のアクションも起こさない。
+++
うわー、篤さん考え込んじゃったよ。
郁はひそかに後悔していた。
最初は、笑った顔が見たかった。
けど、篤さんに理由を聞かれて、答えるのが恥ずかしくて、はっきりと拒絶してしまったのだ。
あ、また眉間に皺が。
…こっち見た。
無言で見つめあう。
「…おい、」
「はい?」
「俺が何かしたか?」
「……」
心配そうに私の顔を覗き込まれた。
…違う、こんな顔をさせたかった訳じゃない。
「私は、篤さんの笑った顔が見たかっただけです」
「…お前な、」
もう色々と呆れたという顔をされる。
「ずっと真顔で見られて笑う奴なんているかぁッ!!」
「痛ァッ!」
頭に拳骨がふった。
「ったく、無駄にヒヤヒヤさせやがって…」
「…すみません」
〔笑顔が好き〕
(じゃあ今日の晩飯は郁だな)(ええぇ!?(…あ、笑った))
御題元・Silence