短編@
□愛しくて憎い君
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最近、郁に対して周りの目が変わってきたように思う。
仕事の面では勿論だが、何より――…
「笠原ちゃん、最近かわいくなったよなー」
「うん。…彼氏とかいたりして」
「まさかッ!」
「何でそんなに焦ってんだよ」
「俺狙ってるんだよねー、笠原ちゃん」
「…まじ?」
「まじ。」
可愛くなった。
そんな事、誰よりも俺が知っている。
お前等のような、ただの同期なんかより、ずっと。
「堂上教官おはようございます!」
「あぁ」
「…(めっちゃ怖ぇんだけど)!」
とりあえず睨んでおいた。
本当なら言ってやりたい。
『郁は俺のものだ』と。
+++
休憩時間、外の空気を吸いたくなったので部屋を出ると、さっきの同期の男と郁の話し声が聞こえた。
「笠原ちゃん、今日どっか食べに行かない?」
「ごめん、今日は無理」
「じゃあいつ空いてる?」
「んーと…」
鈍い。
鈍すぎる。
なぜ気付かない?
この男がお前を狙っていることを。
「笠原」
「あ、教官!」
「そろそろ休憩終わるぞ」
「はい!じゃあね!!」
「え、ちょ…!」
半ば無理矢理会話を終わらせた。
「…郁」
「っ、は、はい!?」
「お前…鈍すぎる」
「…はぁ!?」
〔愛しくて憎い君〕
((そこが可愛くもあるが、な))((私なにかしたっけ…?!))
御題元・Silence