短編@
□駅のホーム
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「まずいな…」
「なにがだ?」
「いや、こっちの話」
そう言ってまた時計を見る。
待ち合わせの時間まであと一時間をきったのに、仕事が終わる気配がない。
今日は毬江ちゃんとのデートの日。
『たまには駅のホームで待ち合わせとかしてみたい!』という毬江ちゃんの要望を聞き、駅での待ち合わせになった。
仕事は午前に内勤、午後に半休の予定だったので、少し余裕をもたせた時間に決めていた。
…が、図書館でトラブルがあり、援護に駆け付ける羽目に。
今は、その報告書と残っている内勤の仕事をしている。
仕方ない、か。
毬江ちゃんに仕事が長引いて待ち合わせに遅れるという趣旨のメールを送った。
+++
家を出てから大分歩いたところで携帯が震えた。
見てみると、小牧さんからのメール。
時間を潰すにしても、家に帰るには遠すぎる。
それなら、と向きを変えずに歩いた。
+++
駅に着いてから、さてどうしようと周りを見る。
駅にはたくさんの飲食店と、申し訳程度に並ぶ専門店しかない。
とりあえず専門店に行こうと思った瞬間、肩を叩かれた。
小牧さんかと思って振り向くと、そこには全く知らない3人の男がいた。
「ねぇ、…達…お…しな…?」
聞こえない。
怖い。
声が出ない。
恐怖で身体がすくむ。
諦めてくれるよう、補聴器が見えるように耳を出した。
すると、男たちはあくどい笑いを溢した。
何で…?
首を傾げると、男の1人が腕を掴んできた。
「ッ!!」
「は…は、や……り声…出せな…ん……」
声を出せないことを笑われているのは分かった。
首に提げている銀の笛をギュッと握る。
『これを困ったときの君の声の代わりにしてください』
『俺に聞こえるように力一杯吹いてください』
『俺に聞こえたら必ず飛んでいくから』
空気を吸い込み、銀の笛を力一杯吹く。
ピ――――――――――ッ
周りの人が一斉にこっちを見たのが分かる。
男たちはたじろぎ、それから力ずくで笛を取り上げようとする。
離すものか、これは、これは、
そのとき、急に男たちの手が離れた。
後ろを見ると、そこには、やっぱり、