短編@

□呼び続ける名前
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…困った。



「篤さん」

「ん?なんだ?」

「なんでもない」



暫くしてからまた呼ばれる。



「…篤さん」

「ん?」

「ううん、」

「……」



もうこのやりとりを数十回は繰り返している。

いい加減…やめてほしい。
何回も呼ばれたまったもんじゃない。



「篤さん」

「なんだ」

「篤さん」

「…郁、」

「はい?」

「さっきからなんだ?俺の名前を呼んで」

「…そろそろ名前を呼ぶのに慣れようと思って」

「…?」

「なんというか…まだ気恥ずかしいというか…」



そう言う郁の顔は、すでに真っ赤。
見てるこっちの方が恥ずかしくなってきた。



「篤さん」

「あと何回呼ぶつもりだ?」

「何回でも。…篤さん」

「郁」

「はい?……ッ!」



郁を黙らせるため、唇を奪った。


〔呼び続ける名前〕



(…もう呼ばないのか?)(呼んだらキスするでしょ?)(勿論)(……)

御題元・Silence

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