短編@
□今、過去に戻れたら
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「郁、そんな難しい顔で何を考えているんだ?」
「もし過去に戻れたとすれば、どこからやり直そうかと思って」
「そんな出来もしない事を…」
「もしかしたら科学が発展して出来るようになるかもしれないじゃん!」
「わかったわかった。で、どこからやり直すんだ?」
「うーん…とりあえず篤さんと初めて会ったときに戻りたいな」
「なんでだ?」
「ちゃんと篤さんの顔を見たかったから」
「…見たとしてもすぐに忘れるだろうが」
「大丈夫!篤さんの顔なら覚えられるよ」
「……」
「篤さん?」
「こっち見ないでくれ」
「顔赤いよ?」
「見るなと言っただろうが!」
「あ、でも…」
「なんだ、まだあるのか」
「やっぱり戻らなくてもいいかな」
「…?」
「もし戻ったとしても、今の状態になる保証はないし。それに、」
「それに?」
「今までのこと全部あっての私だから」
「…そうだな」
「篤さんは?」
「俺は…」
〔今、過去に戻れたら〕
(…俺も、戻らなくていいか。反省はしているが、後悔はしていない事ばかりだから)
御題元・Silence