短編@
□贅沢な悩み
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ハァ…
後ろから溜め息が聞こえて、振り返りそうになるのをグッとこらえた。
誰がその溜め息をついたかなんて、考えなくても分かる。
ここは、私達2人の部屋なのだから。
「…笠原ァ」
「何」
「アンタが溜め息なんて珍しいわね」
「…そ、そうかな?」
「そうよ。何かあった?」
「んー、いや、相談するほどの事じゃないし…」
「言いなさいよ、アンタが悩むなんてよっぽどのことよ?」
「うーん…」
ここまで私が言って渋るなんて…何かあるわね。
そう思うと笑みがこぼれた。
「…柴崎、何でアンタ笑ってんの」
「だって…面白いじゃない!」
「ちょっ…人が真剣に悩んでるのを面白いって!」
「あら、真剣に悩んでるのならなおさら言うべきじゃない?」
「それを信じられないのは私が疑い深いのか、柴崎の性格のせいなのか…」
「ん?何か言った?」
「なんでもない!」
「で、悩みは?」
「まだ引きずるの!?」
「せっかく出来たネタをみすみす逃がすと思う?」
「アンタ言うに事欠いてネタって!」
「ハイハイ、言いなさい」
「うー…」
そして私は、笠原の悩みを聞いてすぐに後悔する羽目になった。
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「堂上教官がね、……でね、…なの。でも、………だし、……だから「ちょっとSTOP!」…何?」
「アンタさっきの悩みって全部それ関係?」
「うん」
「…もういいわ」
「ちょ、人にここまで言わせといてそれはないでしょ!」
「そんなの直接教官に言えばいいじゃない」
「……無理ッ!恥ずかしすぎて死ぬ!」
「誰か私に強いお酒ちょうだい!」
「…それは私に買ってこいと?」
「誰かー!強いおさ「わかった!買ってくるから!」…はじめからそう言えばいいのに」
「あーもー寒いのに…」
「いってらっしゃーい☆」
コートを羽織り財布を持つ笠原を見つつ、携帯のメール作成画面を開く。
To:堂上教官
件名:無題
本文:笠原が1人でコンビニ行くそうです。
あと、最近キスしてないと
愚痴られました。
ごゆっくりー。
「さて、と。帰ってくるまで何分かかるかしらね」
〔贅沢な悩み〕
(…郁!)(え、教官!?)(俺も行く)(あ、はい…!)
御題元・Silence