短編A
□ハジメテの人
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全部、初めてだった。
誰かを好きになるのも、
嫉妬するのも、
想いを伝えたのも、
手を繋いだのも、
抱き締められたのも、
キスしたのも。
全部、全部、初めてだった。
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「…ねぇ、毬江ちゃん」
「何ですか?」
「毬江ちゃんの初恋の人って誰?」
「…何ですか急に」
「ちょっと気になって、ね」
そう言って笑う小牧さんの表情に、嘘は見られない。
少し迷ってから答える。
「誰だと思います?」
「え?クイズ?」
「はい。小牧さんなら分かると思います」
「うーん…俺なら分かる、って事は俺の知ってる人だよね?」
「はい」
あ、悩んでる。
「自意識過剰とか思わないでね?もしかして…俺?」
「はい」
あ、照れた。
珍しく小牧さんの困った顔や照れた顔が見れて良かったな。
そう思って笑っていると、小牧さんは私の頭に手をのせた。
そのまま撫でられる。
「あのさ、」
「はい?」
「…嬉しいよ、俺」
「?」
「毬江ちゃんのハジメテ、全部貰えるから」
〔ハジメテの人〕
(…小牧さんになら、全部あげます)(うわ、それ凄い殺し文句なんだけど)(…?)
御題元・Silence