短編A
□再会
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まさか、また会うことになるなんて、これっぽっちも思ってはいなかった。
「153番、笠原 郁です」
見た瞬間、すぐに分かった。
――あのときの少女。
一体なぜ、防衛部を?
女子なら普通、業務部を第一志望にするだろう。
よりによって、どうして君が。
口から出かかった言葉を全て飲み込む、自分は完全に聞き役に徹する。
ここは、俺が発言しない方が無難だろう。
「志望動機は?」
そう、隊員の一人が聞く。
誰もが気になっているところ。
そして彼女は――今世紀最大級のボケをかましたのだ。
もう恥ずかしさで顔を上げられない。
小牧や隊長は大笑いしている。
俺だって当事者でなければそうしているだろう。
…あくまでも当事者でなければ、だが。
そしてその原因である彼女は訳がわからない、といった顔でこっちを見ている。
――お前が!この状態をつくりあげたんだろうが!
そう怒鳴ることが出来たならば、一体どれだけ楽だっただろうか。
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「あのときは本当にどうしたもんかと思ったよ」
「私だって篤さんが王子様だと知ったとき凄く衝撃を受けたんですから!」
「だがお前はあとから1人で知っただろうが!俺は公開処刑だったんだぞ!?」
「うー…」
「頼むから、もう少し顔覚えをよくしてくれ。これ以上被害者が増えたらと思うといたたまれん」
「それは…無理だと思うよ?」
「お前な…」
隣に座る郁を見る。
本当に、再び会えるなんて思ってなかった。
そして、こういう仲になるなんて。
「月並みな言葉だが、」
「うん?」
「こういうのを運命って言うんだろうな。…また会えてよかった」
〔再会〕
(…じゃあ私に感謝してくださいよ?)(するか阿呆っ!)
御題元・Silence