短編A
□無駄な足掻きと知りながら
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彼はどうして特殊部隊なのだろう。
そう考えだしたのはいつの日からか、全く覚えてない。
思い出せるのは、その時からずっと彼のことを想っているということ。
「…ねえ、」
「どうしたの、毬江ちゃん。…元気がないみたいだけど」
彼は私の方を向いてそう言った。
いつもなら決して聞かないけれど、今日はなぜか聞きたくて。
聞いてしまった。
「いつになれば、図書隊は血を流さずに済むようになるのかな」
「…わからない。少なくとも良化法がなくなるまでは闘わないといけないだろうね」
「……」
悲しそうに笑う小牧さん。
あなたは特殊部隊。
だから、本を守るために最前線で戦わなければならない。
あなたが普通の業務部ならまだ危険は少ないはずなのに。
無駄だと知りつつも、つい考えてしまう。
「(なんであなたは特殊部隊なの?)」
誰にも聞こえないように部屋の中で呟いた。
〔無駄な足掻きと知りながら〕
((もしあなたが特殊部隊でなかったら…。それでも、危険な所に飛び込んでいくんだろうな))
↑御題元・空をとぶ5つの方法