短編A
□気付いたら貴方を探してた
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ねぇ、逢いたい。
逢いたいよ、小牧さん。
最後に逢ったのはいつ?
カレンダーを見て、ため息をついた。
―――もう、4週間も前だ。
この時期、図書隊が異常に忙しくなるということは小牧さん本人から聞いていた。
でも、約1ヶ月も逢えないなんて。
喋れなくていい。
だからお願い。
一目だけでも。
家の中にいるとどんどん思考が暗くなっていくから、気分転換にと外へ出た。
+++
とりあえずコンビニへ向かう。
理由なんてない。
ただ、小牧さんに逢える、そんな気がしただけ。
本当は図書館に行くべきなのだろうけど、図書館に行って逢えなかったときに私はどれだけ落ち込むのか考えただけで怖くなったから行けなかった。
「いらっしゃいませー」
やる気のない店員の声が耳をかすめる。
ゆっくりと店内を見回すと、そこには見覚えのある背中があった。
「…小牧、さん?」
「…毬江ちゃん」
さすがに小牧さんも驚いているようで、その後沈黙がながれた。
「えっと、あの…なんでここに?」
「んー…なんか毬江ちゃんに逢えるきがして。…最近全然逢えなかったし」
言いたいことはたくさんあるのに、言葉にならなかった。
金魚のように口をパクパクさせていると、小牧さんが言った。
「外、出ようか」
「はい」
外に出てからしばらく歩いて、人通りが少ない道に出た。
そこで、突然抱きしめられる。
「やっと、逢えた」
「…はい」
「寂しかった」
「はい」
「気がつけば、毬江ちゃんをさがしてた」
「はい」
〔気付いたら貴方を捜していた〕
(ずっと…逢いたかった)(…はい)
御題元・Silence