短編A
□プレゼントは
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「篤さん、これは?」
そう言って楽しそうにこっちをむく彼女。
今日は珍しく休みだ。
何をしようかと思っていたら急にこっちをふりむいて
「篤さん!買い物に行きましょう!!」
とかって言っていたのが10分前。
そのままショッピングセンターに着れていかれ、まっすぐに紳士服の場所に向かった。
そして今に至る訳である。
…本当に、彼女の行動力には舌を巻く。
「あ、こっちのほうがいいかも!!」
「…あのなぁ、俺は服はいらn「こっちは?」…おい」
軽く無視。
てか、お前が持ってるそれはどうかと思うんだが。
「よし、じゃあこれにしましょう!」
「…俺の意見は何処へいった?」
「海よりも高く山よりも深いところへ…」
「それ間違ってるぞ…」
「…いいじゃないですか!久々に外に出たんですから…!!」
郁はそう言うと強引に服を押しつけてきた。
彼女の視線の先には試着室。
「…わかった」
「よっしゃ!!」
「…」
仕方なく試着室へ向かう。
+++
「…」
無言で試着室から出てきた篤さんは、いつもとは少し違う。
そりゃそうだよね。
あまり着そうにない服を選んだのだから。
「やっぱり似合ってる!!」
「…俺は「今日一日は私の言うとおりにしてください!!」…」
篤さんは覚えてない、かな?
今日が何の日か。
+++
レストランから出て、思わず呟いた。
「すごくおいしかったです!」
「ああ」
「…篤さん、怒ってますか?」
「何でだ?」
「だって今日、私の我儘で付き合わせたから…」
「いや、怒ってない」
「そうですか?」
「…それより、」
そこで言葉を切ってごそごそとポケットから何かを出した。
「…なんですかこれは?」
「…今日は付き合って1年の記念日だろ?」
「!」
びっくりした。
篤さんが、記念日を知っているなんて。
「…いらないのか?」
「いえ!いります!いただきます!!」
あわててそう言うと、篤さんはいかにも楽しそうにクックッと笑った。
「…」
「どうした?」
「いや、篤さんが笑うところを久々に見たと思って…」
「…」
[プレゼントは]
(今日は本当に幸せだ!)(大声でいうな阿呆!)