短編A
□愛されすぎるのも辛い
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暑い。暑い、暑い…
「暑い――ッ!」
「じゃあ脱ッ…すまん、今の無し」
手塚は自発的に自分の案を取り下げた。
それは今まで、郁と堂上がこの事で争う場面を幾度となく見てきたからだ。
「ったく…何で脱いじゃいけないのよ。篤さんのばーか」
「俺が何だって?」
「うわぁ、出た!」
「おい、さすがに出てきたはないだろ…」
呆れたようにため息をつく彼は、私の上官であり恋人である篤さん。
普段は厳しくて優しくて、どこを見ても尊敬出来る人。
自分なんかには勿体ないといつも思っている。
…ある一点を除いて。
「暑いので脱いでいいですか」
「駄目だ」
「なんで」
「下に着ているのタンクトップだろうが」
「それがなにか」
「気にするだろう、いろいろ」
「私は気になりません!」
「お前が気にしなくとも周りが気にするんだ!」
いつもそう。
彼は私に対して過保護なのだ。
特に薄着になることに関しては何よりも反応する。
柴崎は『それも愛情表現の一つじゃない?』と言っていたけど、私には耐えられない。
だって暑いんだもの!
〔愛されすぎるのも辛い〕
((それでも、『好きだから』と言われると我慢しちゃう自分がいるんだよなー))
↑御題元・Silence