短編A

□気付いてた、本当は
1ページ/1ページ


とん、篤さんの隣に腰掛ける。
篤さんは無反応。
「ねぇ、」篤さんに話し掛ける。
篤さんは無反応。
くい、篤さんの服の袖を引っ張る。
篤さんは無反応。
ぎゅっ、篤さんの手を握る。
篤さんは無反、…



「キャ――!」

「うるさい」

「だって!さっきまでめちゃくちゃ集中してたじゃないですか!テレビに!」

「今も集中してるぞ」

「じゃあ何で、」



指を絡めたんですか。

言えない。
恥ずかしくて言葉が出ない。



「これか?」



そう言って篤さんは握っている手を私の目の前に掲げた。



「!」



途端に顔が赤くなる。
にやりと笑う篤さん。



「…なんか今日の篤さん意地悪です」

「そうか?まぁたまにはこんな日もいいだろ」

「嫌ですー」



繋いだ手をほどこうとしたがほどけない。
ギロ、と篤さんを見るが、篤さんはまたテレビに集中していた。



「うー…」

「唸るな、郁」

「はなして」

「それは嫌だ」



そして篤さんは私の頭を優しく撫でる。
それだけで全て許してしまいそう。



〔気付いてた、本当は〕



((郁が構って欲しかったということに))

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ