ショート


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「好きだ」


あぁ、言っている。
俺に向かって言っている。

だけどこれは────



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「おい、どうした?」


少しうなだれていた俺の幼なじみに問い掛けると困ったように眉をハの字にして振り向く。
その顔に思わずドキッと心臓がはねる。


「それがよぉ」


いつも聞かなければよかったと思うのに、やっぱり話がしたいのだ。


「俺、今日ヒロちゃんの前で噛みまくったよ。やべぇ、嫌われたかな……?」


「…大丈夫、だろ」


「本当?いや、でもさ」


ぶつぶつとまだ何かをつぶやいている幼なじみを見つめていた目をギュッと閉じる。
俺がこいつに対する恋心に気づくには……少し遅かった。
その頃にはこいつはすでにクラスのヒロちゃんに恋をしていて、俺もその相談を受けていた。


あー、最悪。


「ん?どした?」


「…別に」


「そぉ?疲れてんじゃないのか?睡眠しっかりとれよ」


「あぁ、さんきゅ。んで、どうしたの?」


「お、俺さ、ヒロちゃんに告白しようと思うんだよ」


あぁ、壊れる。
壊れていく。
俺が壊れていってしまう。

こいつの恋が叶わなければいいなんてそんなことを思ってしまう。
思いたくなんか……ないのに。


「でも、告白する勇気がないんだよなぁ…」


「それなら、さ」


ほら、俺が壊れる。


「俺で試してみたら?」


「え?」


「俺でよければ練習に付き合ってあげるけど」
















「好き、でした」


「……」


言っている。

俺に、言っている。


練習だってわかっているのに。
胸が心が身体が震える。喜んでいる。泣いている。


「どう?このシチュエーション?」


ワクワクしているような表情で聞いてくるこいつを見て、泣きそうになった。
泣くわけには……いかなかったけど。


「ん。まぁ、及第点」


「ひどっ!ま、サンキューな!!いつも迷惑かけてごめんな」


「いいよ。迷惑なんて思ってないから。……ほら、最後にもう一回言いなよ」


「ん?そうだよな。念には念を入れとかないとな」


ニコッと屈託なく微笑み、また俺に向かい合う。


「ずっと前から大好きでした。…付き合ってください」


これは練習だ。
そして俺が好きなのはこいつで、…………こいつが好きなのはヒロちゃん。


「…いいのに」


「え?」


「なんでもない」



壊れた俺が望むのは、このままこいつが本気になればいいのに…なんていう、くだらなくて幼稚な考え。


「頑張れよ」


気づいてほしい。でも、気づかないでほしい。

この俺の薄汚れた心には。


・俺
不器用平凡少年
片思い中

・幼なじみ
ヘタレ平凡少年
片思い中

・ヒロちゃん
クラスの女子

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