小説的なもの
□わたりどり
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この家から出てっても、旅が終わって戻ってくるのはいつもこの家。それはまるで、長い旅に出ても自分の巣に必ず帰ってくるツバメのようではないか。
(わたりどり、か)
バルサはフッと笑った。そして昼寝をしているタンダの耳元で囁いた。
「…わたりどりは必ず、戻ってくるんだよ」
そうして彼女は去って行った。
その女の気配が消えると、タンダは体を起こした。
「…ったく。なんだよ、あいつ」
来たと思ったらすぐに去った。
タンダは、女の吐息のせいでこそばゆくなった耳をそっと触った。
「聞こえてるよ」
わたりどりは必ず戻ってくる。…それなら。
(ちゃんと巣を守っておかないとな)
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→あとがき