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□こんなに近くで…
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それは、突然の事だった。
「ザックス、重いよ!」
ソファに座るザックスの足元、床に直に座りながら二人でTVを見てた。
ザックスが何か話しかけてきて、自分は上を見上げながら笑って「そうだね」なんて相槌を打って。
本当にいつもと変わらない、ありふれた風景だった。
再び目線をTVに向けたとき、肩に重いものがのしかかった。
「ザックス?」
振り向こうとして、耳元に彼の吐息がかかるのを感じた。いつもより荒いような気がする。
風邪でも引いたのかと聞こうとして、だけど出来なかった。
「ん……っ」
直ぐに温かいものが口の中に侵入してきて、俺はそれがキスだと気付く。
なんでかわからないけど、ザックスが欲情してるらしいことだけ同じ男として理解はできた。
ただ、相手が問題なだけで。
額を押しやって無理矢理顔を遠ざける。
「ザックス!酔ってんのか?ふざけるのも…」
言葉が途切れたのは、目の前にあるザックスの瞳があまりに真剣で、驚いて力が緩んだ拍子にまた唇を塞がれたから。
お腹のあたりが急に寒くなって、次いで触れる人肌。
大きな手が俺のお腹から脇、胸へと滑る。腿に当たるザックスの熱い塊。
そこでようやっと自分が今晒されている危機的状況に焦りを覚えた。
力一杯抵抗する。冗談じゃない。なんでただのトモダチにカマを掘られなきゃならないんだ。
だけど相手は俺よりもガタイが良くて、しかも力では敵わないソルジャー。
上にのしかかられて足はびくとも動かせない。自由に動かせる腕で引き剥がしにかかっても、ザックスの固い筋肉に阻まれて徒労に終わるだけだった。
「やめろって!ザックス!!」
耳の穴に舌をねじ込まれ、舐め回され。
快感と不快感に背筋が震えた。
「やだぁ…っ!離し…」
顔を遠ざけてもザックスの愛撫は止まらない。
ザックスは何も言わず、ただ荒い息遣いだけが耳の中にこだまする。
体をまさぐっていた手が、ジーンズの中に差し込まれた。
恐慌状態を脱すると、あとはただ「怖い」の感情だけが俺の内心を嵐のように揺さぶりかける。
「やだ!やだぁ!厭だ!…助けて、誰か!」
いつのまにかこぼれた涙がこめかみを伝い、耳に届いて、そこで初めて自分が泣いているのだと気付いた。
一度吐露してしまった感情は止まらない。
ひたすら泣き叫びながら、「厭」と「助けて」を繰り返していた。
トモダチだと思ってた。
こんな馬鹿げた事をするような奴じゃないって、信頼してたんだ。
俺を力でねじ伏せて、欲求のはけ口に使うような人じゃないって。
裏切られた。
腕で顔を覆い、声も我慢せずに泣き続け、ザックスが体を離していた事を知るのは暫くしてから。
「……ごめん」
聞こえてきた声は、掠れ、震えていた。
胸元をはだけられ、ジーンズはボタンは外されてはいたもののそれ以上は思いとどまってくれたらしい。
俺は死に物狂いで身なりを整えると、振り向きもせずに部屋を飛び出した。
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