log 記入用

□三つ編み
1ページ/1ページ









「クラウドー。三つ編みってどうやんの?」



 キツい訓練も終わって、ザックスの美味しいご飯も食べて、あったかいお風呂にも入った。あとは眠くなるまでだらだらして時間を潰すだけ。ソファで寝そべりながら広報shin-raを読み「セフィロスさんってやっぱりカッコイイなぁ」とうっとりしていたクラウドは、ザックスのその一言で急に現実に引き戻された。

「みつ…あみ?」

 風呂上りのザックスはいつもの時期なら裸族でビールを一杯、といくのだがこの時期…冬の間だけは脱衣所でフル装備(つまりは寝間着姿)になって出てくる。スウェットの肩のところが濡れた髪のせいで染みを作っていた。

「そ、三つ編み」

 頭をタオルでガシガシ拭きながらクラウドの寝そべるソファの一番隙間のあるところ…クラウドの足側にどっかりと腰を下ろした。バウンドしながら、ザックスが座りやすいようにと身を起こし、クラウドはもう一度聞き返した。

「みつあみ?」

「三つ編み。…知らない?」

 知ってるけど…と答えながら、ザックスがなんでまたそんなことを聞いてくるのかその疑問のほうが大きくて。

 聞くってことはザックスは知らないんだろう。じゃあどうして知りたいのだろう。誰かの髪を三つ編みにしたいのか。自分は短いから、髪の長い人が対象だ。ということは、対象は女性に限られてくる。

「仕事で必要になるのか?」

 とりあえず、無難なとこから聞いてみた。

「いやぁ?ロープの結び方なら習ったけど。オレが知りたいのは三つ編みの仕方」

 クラウド、そういうの器用じゃん。

 そう言われて控えめに頷いた。三つ編みは子どもの頃に母から教えてもらった。編み物をしている母の傍にずっといたから、暇を持て余すクラウドに簡単な遊びとして教えてくれたのがきっかけだったと記憶している。

「いいけど…今教えた方がいい?」

 誰かの髪を結うのか、肝心なところは聞けないままクラウドは尋ねた。

「んー…どうせなら実物でやりながら教えてほしいんだよな。明日休みだったろ、クラウド。ヒマ?」

 頷いてから後悔した。自分の知らない女性とザックスが仲良くしてるところに行くのはなんか嫌だった。

「オレ明日半日勤務だからさ、それ終わったら付き合ってよ。昼飯奢るし」

「でも、俺…邪魔じゃないか?その、デートなんじゃ…」

 きょとん、とした顔を向けて、それから大爆笑のザックス。クラウドの背中をバシバシ叩きながら尚も笑って言った。

「デートなわけ、ナイナイ!あ、場所が本社ビルだから一応面倒かもだけど、制服着てきてな?」

「………は?」

「前からオレのルームメイトの話はしてたから、あっちはクラウドの事ちょっとは知ってるから大丈夫」

 それは誰ですか、とか、話ってどんな内容ですか、とか。聞きたいことを口にする前にザックスは「じゃあ明日、電話するから」とすっきりした顔でソファから立ち上がりリビングから出ていってしまった。

 呆気に取られたまま、しばらくは閉じられたドアを眺めていたが、ややあって金縛から解かれたようにクラウドはソファにもたれかかった。

「なんだかいまいち…」

 意味が分からない、と呟いて、ふと手に触れた広報誌に目を落とした。

 表紙に写る英雄セフィロスの横顔。

「セフィロスさんの髪だったら、やりがいがありそうだよな…」

 いやでも、こんなさらさらした髪じゃ結うのも大変かな、とか三つ編みのお下げにしたら笑えるよな、と一人空想して笑った。



 まさか、翌日にその空想が実現されることになろうとは夢にも思わず。







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ