完結作品

□自給自足生活
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世の中のお姉様方、こんにちは!
僕は現在、屋上に来てます。
理由は簡単で、僕の友人である平凡くんが不良なイケメンに呼び出されたからです!
ヤバくない!?
だって不良が一度も絡んだことのない平凡を呼び出すなんて、不良×平凡のフラグ立ちまくりじゃん!
その王道な展開を見守る為に、僕は屋上にいるのです。
勿論、誰にも気付かれないように隠れてるよ。
それにしても、不良さん遅いなぁ……。
さっきから一人で屋上の中央に立っている僕の友人が、不安げにキョロキョロしてる。
早く来て「俺と付き合え。答えはイエスか、はい、だ」とか言っちゃってください!!

僕が色々シチュエーションを考えていると、ドーンと屋上の扉を開く音がした。
うん、今の音なら絶対壊れたよね。
さすが不良さん!
友人の様子を窺うと、彼はさっきの音に驚いて、尚且つ不良さんの放つ怖いオーラに怯えて震えていた。
ヤバ、今、可愛く見えるよ!
さすが不良さんに愛されてるだけはあるね!!

「お前が山田か」
「は、はははははいッ!!」

不良さんの不機嫌そうな、低音ボイスが耳に響く。
うわ、めっちゃ恰好良い……これは良いモンが見れるよ!
早く不良×平凡が見たい!
平凡くん……じゃなくて山田、お前早く抱き付きに行け!!
いや、まずは不良さんに愛の告白をしてもらわなきゃね!
落ち着け、僕!!

「あ、あの、どどどどうして俺を……?」

うんうん、そして不良さんが「俺と

「お前を殴りに来た」

付き合え」ってね!
……あれ?
僕の耳に幻聴が聞こえた気がしますよ。
お姉様方、僕の耳はおかしくなったのでしょうか?
腐りすぎたのでしょうか!?

って、混乱してる場合じゃない!
もし幻聴じゃないなら僕の友人、山田が殺られる!!
ヤられるのは大歓迎だけど、殺られるのはダメだよ!

僕は喧嘩も出来ないのに山田の前に飛び出した。
文字通り頭からスライディングしながらね!
ちょっと制服が擦れちゃったけど、ごめんなさい母さん。
後で自分で繕います。

少し擦り傷が出来た右手を庇いながら、僕は山田の前に立った。
目の前には怖さに震える山田がいる。
山田、僕、そのまま不良さんとくっついちゃえって思ってたけど、そんなのダメだ。
山田が溺愛されるのは眼福だけど、顔が腫れてある意味非凡な山田は見たくない!
そして呼び出されたときにニヤけてすみません!
止めれば良かったんだ!!

「山田、ごめんね」
「え……どうして、鳴瀬が、いるんだ?」
「だから、ごめんってば」
「意味分かんねーし!!」

山田は混乱したのか僕の肩に両手を置いて僕を揺さぶった。
ぐわー頭がー脳みそがー揺ーれーるー!

「鳴瀬──痛ッ!」

一瞬、何が起きたのか解らなかった。
だって、さっきまで僕の肩にあった山田の両手が……というか山田自体、消えたんだ!
思わず山田を探すと、山田は仰向けに倒れていた。
山田、何故倒れた!?

「山田ァ、いい度胸してんじゃねーか」

真後ろで聞こえた声に、僕はビクッとする。
スッゴく近い所に、あの不良さんがいらっしゃる……!?
近くで見目麗しいお顔を見たい気もするけれど、怖くて見れない!
でも山田を助けなきゃいけないから、僕は震える声で不良さんに制止の言葉を掛けた。

「ややや止めてください!! 山田は何も……何も、悪くはない、んです……よ」
「…………」

不良さんは何も言わず、代わりに僕の左肩に右手を置いて、僕をぐるっと回転させた。
目の前には、遠くから見ていたい見目麗しいお顔があった。
……うん、ホント遠くからでいい。
いくら萌えの為だからって、こんな至近距離でイケメンな不良さんを見なくてもいいです!
オーラが怖いよ!!

「……鳴瀬敏弘」
「は、はははははいッ!!」

あ、山田と同じ答え方をしてしまった!!
いかん、僕も殴られる!?
……って待てよ。
どうして不良さんが僕の名前を知ってるんですか?

「俺と付き合え。答えはイエスか、はい、だ」
「…………ハイ」

まさかの、いや寧ろある意味想定内の不良さんの台詞に、僕は頷くしかなかった。
え、僕がリアルに不良×平凡を体験しちゃうわけ?
そんなの聞いてなーい!!


鳴瀬敏弘、十五歳。
人生初めての恋人は、イケメンな不良さんでした。




自給自足生活
(自分で自給自足しろってことですか)




*fin*

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