幽遊白書

□記憶への回廊
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その日も飛影は苦戦をした後、

 やっとの思いで自分の森へ帰り湖で身体を癒していた。

―くそっ・・・あいつ二発も当てやがった

 飛影は腕に付いた二つの傷後を水で濡らしながら血をふき取っていた。

 その時だった。

 ふとかすかに覚えのある妖気を感じた。

 すばやく身を隠そうと身構えたが、遅かった。

 動こうとした瞬間飛影の背後には既にその妖気は息づいていたのだ。

「振り向くな!邪鬼。」

 その妖気はまぎれもなく捜し求めていた妖狐のものであったのだ。

 一瞬にして凍りつく恐怖とはうらはらに言い知れぬほどの喜びが

 胸の奥底から沸いてくるのが飛影にも解っていた。

 しかしその気持ちをうまく処理できず飛影はとまどっていた。

「怪我をしたのか。」

 そう言うと、妖狐は背後から飛影の腕を持ち上げた。

 そして腕から流れる血をペロリと舐めた。

 その舌の感触は優しくなめらかだった。

 妖狐が数回舐めるとその血は止まった。

 そして見た事もない解らない薬草をはりつけた。
 
 飛影は身動きひとつせず妖狐のするがままになっていた。

 妖狐が動くたびに銀色の髪がさらさらと飛影の顔や、肩を撫でた。

 その事がひどく心地よい。

「お前は私のものだ・・・」

 治療が済むと妖狐は穏やかにそう言って飛影を背後からだきしめた。

 飛影は今まで感じた事のないほどの心の高まりを覚えた。

 妖狐の腕は逞しく、その胸は大きかった。

 飛影はおそるおそる妖狐のその腕に手をかけてみた

―!

 飛影がつかんだ妖狐の腕はなにやらしっとりと濡れて血の匂いがした。

「キサマ、怪我をしているのか。」

 さっき妖狐が治療してくれた自分の怪我なんてものとは比較のしようのないほどの深さだという傷が飛影の眼に映った。

 妖孤は流れる血をまたペロリとなめた。

「かすり傷だ。」

 飛影は振り向こうとしたが妖孤は飛影を抱く腕の力を強めそれを許さなかった。

 飛影は流れる血を暫く見ていたが思い切って自分を抱きしめたままでいるその逞しい腕に

 唇をあて流れる血を吸ってみた。

 やはり傷は深い。

 いくら吸っても血は流れ落ちた。

 妖孤は飛影のするその行為を不思議な気持ちで受け止めていた。

「邪鬼、気に病む事はない。今は少しばかり妖力が下がっているだけだ。一晩過ぎれば塞がる。」

 妖孤はそういうと大きめの長い葉を腕にまきつけた。

 それはやはり薬草なのだろう。

 妖孤は腕に葉を巻き終えると後ろから飛影の首筋を舐め始めた。

 少し驚いて体がびくっと動いたが飛影は黙ったまま身をまかせていた。

 妖孤は飛影の首に優しく口付けをし長く細い舌を這わせた。

 その舌が首筋をかけあがり柔らかいふくよかな飛影の耳に達した。

「あ、あ・・・・」

 殺されるのかも知れないと言う恐怖と”魔“本来の欲望との狭間で

 押し寄せる津波の様な快楽に口元からは声が漏れる。

 飛影は慌てて声を抑えようと奥歯を食いしばった。

「声は抑えるな、苦しくなるだけだ・・・」

 妖孤はそう囁くとその舌を飛影の小さな耳の奥にしのびこませる。

 飛影の身体は全身の力が抜け、妖孤の腕の中にすっぽりと身を任せた状態になっていた。

 高まりつつある飛影の身体は正直に欲望を露にし始めていた。

 しかしその欲望の中で飛影はその瞳から一粒の雫を溢していた。

 それは恐怖からでも哀からでもないものだという事が”魔“である飛影にはわからなかった。

 そしてその雫は妖孤の腕に音もなく落ちた。

 妖孤は不思議な気持ちでその雫を見ていた。

「邪鬼・・・お前は何故涙を流す。私が怖いか?」

 飛影は応えなかった。

 怖い訳ではなかった。

 ただ、その感情をうまく言葉には出来なかったのだ。

 妖孤はこの小さな身体をますます離したくない衝動にかられた。

 妖孤ですらその雫の意味は解らなかった。

 そしてこの小さな邪鬼を何故こんなにも愛おしく思えるのかは

 やはり同じ”魔“である妖孤にもその感情にうまく説明のつく言葉は見つからなかった。

 殺されるかもしれないと思いながらも己の身を自分に全て預け、

 こんなにも感じやすくふるえ、涙を流す。

 そんな飛影に妖孤は初めて優しくしてみたいと思った。

 そんな感情は長い時間を生きいて初めて知った感情だった。

 妖孤は抱きしめていた片腕をとき舌を首筋や耳に這わせながら

 その手で飛影のすっかり突起してしまっている胸の先端を優しくつまんではもて遊んだ。

「うっ・・あっ・・・・」

 飛影は嗚咽の様な熱いため息まじりの声をあげて背を後ろにのけぞらせた。

 妖孤はその飛影の顔を除き込む様に舌を飛影の唇にしのびこませた。

 飛影は眼をつぶったまま妖孤の舌を受け入れ、飛影もその舌に自分の舌を預けた。

 意識が遠ざかっていくようだった。

 飛影は自分自身が徐々に消えてしまう様な概念に囚われていた。

―ここにいるのは・・・オレでは・・・ない

 意図する場所に心は飛んでいた。

 そして妖孤の指先は飛影の胸から下へと降りていった。

 うっすらと快感に濡れそぼった飛影自身を軽く握った。

「あ、あ・・・・ん・・・」

 飛影はもう声を殺す事も忘れ登りつめていたが必死に耐えようとした。

 そんな飛影に妖孤は飛影自身を強く握り、そして上下させ言った。

「抑える事はない。」

 妖孤の言葉に飛影は戸惑いながらも優しく強く握られた妖孤の指の動きに身を任かせていた。

「あっ・・・・っつ・・・・くっ・・・」

 抵抗する間もなく飛影は妖孤の指の中で彼自身を開放させていた。

「いい子だ・・・」

 妖孤はぐったりとした飛影にそのまま、今まで以上の優しい感触で愛撫を続けた。

 飛影は気を失いかけていたが妖孤の舌の動きに再び、反応し始めていた。

 落ち着いてきた呼吸がまた少しずつ荒くなっていった。

 妖孤はその場に胡坐をかいて座り飛影をそのまま自分の膝のうえに座らせた。

 相変わらず妖孤の舌は飛影の全身を嘗め回していた。

 飛影は後ろ向きのまま背中を舐められてまた自分の背を弓なりにした。

 妖孤は半開きに開いた飛影の口に自分の指を銜えさせた。

 飛影はその指に自分の舌をからませた。

 妖孤はもうひとつの手で飛影を少し前かがみにさせ、両足を広げ、

 飛影のふたつの小さな双丘を優しくなで回した。

「あっ・・・ん・・・」

 飛影は口から唾液をこぼしながら今まで感じた事のない快感の中にいた。

「力を抜いて、私にすべてを預けるんだ・・・」

 妖孤はそう飛影の耳元で囁いた。

 飛影は抵抗する気などなかった。

 すべては妖孤の手の中にあるのだから。

 そして妖孤はまだ、何も知らない飛影の蕾のまわりを自分の唾液をたっぷりと含ませた指で優しくほぐしだした。

 飛影はその初めて受ける感覚に一瞬身体を硬直させた。

「力を抜くんだ・・・」

 妖孤はそう言うと髪の間から小さな実を取り出し爪でつぶした。

 その実からはぬめりけのある透明の液体が溢れた。

 妖孤はその液体を指につけ飛影の蕾の周りをゆっくりと円を描くように動かした。

 飛影はその場所からじわじわと暖かなぬくもりを感じた。

 しばらくすると妖孤は指を一本だけその蕾にそっと挿入した。

「ひっ・・・」

 飛影は少しの痛みを感じたが不快ではなかった。

 そのまま自分の口に差し込まれたままの妖孤の白く長い指を吸い続けていた。

「いい子だ・・・もう一度力を抜くんだ。」

 妖孤は優しく囁き飛影の首筋に舌を這わせた。

 そして今度はその蕾に二本の指をゆっくりと差し込んでぬるぬると出し入れをした。

 その部分は妖孤がぬらした実からの液体で十分な潤いをみせ出した。

「あっ・・・あ・・・」

 飛影は痛みの中で喘いでいた。

 妖孤の這いずり回る舌は飛影の痛みを少しずつやわらげ遠のかせていく。

 二本の指で出し入れされている飛影の蕾はくちゅくちゅと音をたて始め

 飛影自身だけで十分な程濡れ出した。

 そして妖孤の指先には吸い付くような肉のひだがまとわりついていた。

 こんなにも敏感に反応し、求める姿は見た目からは想像も出来ないくらいの

 情熱を持ち合わせている、妖狐は思った。

 今までにこんな身体を味わった事がなかった。

 その事を妖孤は以外に感じたが飛影自身は気づいてはいなかった。

 妖孤は飛影の口の中に入れた指を二本にした。

そして飛影の身体を元に戻し、双丘を持ち上げると飛影の蕾から遊ばせていた指を抜き

 妖孤のいきり立ったものの上にその蕾を押し当てた。

 飛影の身体が飛影の意識とは逆に逃げていた。

「力をぬくんだ・・・」

 妖孤はそう言って飛影の腰をゆっくり引いて自分の雄を埋没させ、飛影をひきさいた。

 飛影の両方の太ももに赤い血がいく筋かの線を描いた。

「あ、あああ・・・ああ・・」

 酷い痛みの中で逃げようとする飛影の腰を妖孤は片腕でしっかり押さえ上下にうごかした。

 飛影は痛みの中で妖孤の指を銜えたまま涙を流した。

 妖孤は飛影の中で何度も蠢き飛影を抱きすくめた。

 やがて飛影は徐々に妖孤を自分の中で奥深く感じる事が出来る様になっていった。

 いつしか小さな身体は逃げる事を忘れ妖孤の逞しい腕の中で自分を貫くものをとらえようとしていた。

 幾度も重ねられるその動きに飛影は喜びを感じ始めていた。

 そして萎えた自分自身を妖孤が自分の動きにあわせて優しく弄ってくれていたのを知った時

 飛影は果てしない痛みから逃れ妖孤の動きに自分も生きづいている事に気づいた。

 激しい息遣いの中二人は”魔“のするところの欲望のまま己らを自ら解放していた。

 飛影は妖孤が自分の中で開放した事を感じながら気を失っていた。

 再び森に静寂が訪れた。

 小さな動かなくなったその身体を妖孤は湖の水できれいに洗ってやった。

 傷ついた飛影の蕾に薬草をぬり胡坐をかいてその膝の中に飛影を包みこんだ。

 そしてゆっくりと時を過ごした。


 しばらくして飛影は目覚めた。

 そこは今まで触れた事のない暖かな温もりの中だった。

 大きなぬくもりは美しくそして優しい瞳で飛影を見下ろしていた。

「目覚めたか、邪鬼よ。」

 銀色の髪はやはり月夜に照らされ美しく揺れる。

 その妖美な姿に飛影は声が出なかった。

「お前は何も語らないのだな。まあ、それもよかろ、

 邪鬼、この剣をお前にくれてやる。

 お前はまだまだ強くなる。お前の本当の力をつけて私の元へ帰って来い。

 そのときまた、相手になってやる。」

 妖孤はそう言うとひとつの剣を差し出した。
 
 飛影はその剣を受け取ると妖孤の膝から立ち上がった。

 剣は重く飛影は落としそうになった。

「ふん、お前にはまだその剣は振れまいな。それなりの言われも曰くもある剣だ。

 強い妖力がなければ鞘から出すことすらできまいな。へたに触れば命を殺られるぞ。

 お前がその剣を操れるようになったら私のもとへくるがよい。」

「なぜ、オレに?」

 飛影が剣から顔をあげた時にはもう既に妖孤の姿は消えていた。

 あわてて妖気をさがしたがそれは全く無意味な事だった。

 それからしばらくして霊界のハンターに追われた妖孤が人間界へと逃げ込んだという噂を耳にした。

 あれだけの妖気をもつ妖孤がハンターごときにやられるはずがない。

 飛影は妖孤の身を案じた。

 飛影はあの日何故か、妖孤が深手を追っていた事を思い出していた。
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