BLEACH

□憂鬱
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「店長・・・よろしいですか?」

研究室の扉の向うからテッサイの声がした。

「ちょっと今、手・・・放せないんですけどねえ・・・なんでしょう?」

喜助は藍染達の侵略に備えべく尸魂界より命を受けていた

時空間入れ替え装置の大詰め作業に入っていた。

「申し訳ないのですが。十番隊の隊長さんがお見えでして。」

その返事に喜助の手が止まった。

「日番谷隊長・・・ですか?」

「はい。」

思いも寄らぬ来客に喜助は思案した。

「それではここへお通ししてもらってもいいっすかねえ・・?」

「承知致しました。」

テッサイの気配が消えたと同時に喜助は止まったままであった手を再び動かし始めたが、

ふと頭の片隅に気になる文字が過ぎった事に違和感を感じた。

黒くどんよりとしたいくつかの文字。

その配列・・・

その文字がいったい何を意味するものなのか・・・



暫くすると地下へと降りてくる強烈なまでの霊圧を感じる。

―なんて・・・冷たいんだ・・・

喜助は息を呑んだ。

その重圧 凍てつくほどの寒気は喜助が纏う気の流れを伝わり底知れぬ不安を抱かせる。

その気が一歩一歩近づくのに耐えかねて

喜助は扉の鍵を静かに開け廊下へとちょこんと顔を出した。

「忙しいところすまん。」

長い廊下の突き当たりの階段を下りた場所で十番隊隊長である日番谷冬獅朗が凛と

その身に大きな霊圧を纏い立っていた。

小柄な風体とは程遠い過度な霊圧。

―このお方は本当に強い人だ・・・

喜助はその姿を実感した。


―人の心の弱さを身を持って知っている。人の持つ痛みを知っているんだ・・・

本当の心の痛みを・・・こんなに若くして何故そこまで・・・

な・・・なんだ?鳥肌?

喜助は知らず知らずに自分の腕にボツボツとそうげだつ波に驚いていた。

「どうかしたのか?」

冬獅朗がゆっくりと歩を進めながら口にしたその瞬間、喜助はふと我に返った。

「あっ・・すいませんねえ・・・こんな所までお越し頂いてしまって。」

「いや・・・こちらこそ申し訳ない。忙しい最中に押しかけた。」

心地よく穏やかに会話する冬獅朗であったが

喜助は冬獅朗の姿になにか得たいの知れない恐怖を感じていたのだった。

「お急ぎなら仕方ないですよ・・・ええ・・・っと

私もちょっと急いでましてやりながらでも構いませんかねえ?」

「勿論だ。長居をするつもりもない。早速用件だけ話させてもらおう。」

「すんません。お願いします。」

喜助は軽く言ったが鳥肌がいまだに消えてない事を必死にかくしていた。

「じゃ、こちらへ・・・」

へらへらと笑いながら喜助は扉を押し開け
冬獅朗を中へと招きいれた。

「失礼する。」

冬獅朗は 足早に喜助の横を通り過ぎ部屋の中へと入って行った。
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