BOOK
□零度の蕾
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友達なんていらないの。
裏切りなんて辛いだけ。
そんな想い、何度もしなくていいでしょう?
だったら、最初から独りになればいい。
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私の中学時代はそれなりに充実していたはずだった。
「蕾、移動教室だよ。行こう!」
「うん!」
仲のいい友達が居て、
「あ、逢坂さん。
今回の中間テストも良かったわよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「次も期待してるから、頑張ってね。」
「はい!頑張ります!」
先生からの信頼も厚く、
まるで悩みの種もない、そんな毎日が続いていた。
その日常が壊れ始めたのは、友人の一言だった。
「ねぇ、蕾は好きな人って居る?」
女子にありがちな恋の話題。
そんなありきたりなひと言が、私が決意をしたことへの始まりだったのだと思う。
「へっ!?い、居ないよ〜…。」
「本当〜?…私ね、桐咲くんが好きなんだ。」
「そうなの!?」
「うん…。望み高いけど…。」
「そんなことないよ。美南なら大丈夫だって!」
「そう…かな?」
「うん!!私は応援するよ。」
「本当!?ありがと、蕾!」
友達の恋の応援。
恋の相談なんてされたら誰でもそうするはずだ。
「蕾も好きな人が出来たら言ってね。
私は蕾の力になりたいな。だからもっと頼ってよ!」
「うん、ありがとう。」
美南が笑って、私も笑った。
本当に幸せな時間だった。
だけど、この約束はしないほうがよかったと後で後悔することになる。
そう。
私は美南の好きな人に告白されてしまったのだ。
なんて迷惑な偶然。
「ごめん…なさい。貴方とは付き合えません。」
私は断った。
美南を裏切るなんてできなかったから。
でも、それだけじゃ終わらなかった。
何故か次の日、その告白はクラス中に広まっていた。
それも、告白をしたのは「私」という噂にありがちな嘘まで付け加えられて。
勿論、広めたのは告白してきた桐咲だった。
絶望した。
当然と言ったように美南には無視をされ、
クラスの女子は全員、美南の味方に着いた。
そして、女子特有の仲間外れと陰口。
男子はそれを面白がるように私を徹底的にいじめた。
女子は美南を男子は桐咲を先頭として
私はクラスの中でいじめられ、密かに孤立していったのだ。
何度も浴びせられる陰口と
何度も課せられる暴力と
何度も何度も繰り返される地獄のような毎日。
限界だった。
日増しに私の中の何かが崩れていった。
そして、それが終わる卒業式の日。
私は卒業証書を抱え、学校を卒業すると同時に
今まで信頼していた友情と、それまでの自分を捨てた。
これが、私が自ら孤立し始めた理由だ。
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