BOOK
□零度の蕾
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あれから数日が過ぎた。
私は前と変わらず日常を送っていた。
誰とも喋らない。
誰とも関わらない。
勿論、水城陽太とも。
あの屋上での一件以来、水城陽太は私に話しかけてこなかった。
おおよそ予想はしていた。
むしろ、それを望んでいたはずだったのに。
何故だかそれを寂しく感じてしまう自分が居た。
あの日以来、私はおかしい。
水城陽太なんて、関係ないはずなのに。
関わって欲しくないはずなのに。
どうして切なくなるのかも
どうして寂しくなるのかも
この感情すべてがわからない。
自分が自分じゃなくなっていく気がする。
あの日から、私はどこか変わってしまったのだろうか。
ずっとモヤモヤしている頭の中。
イライラしてしょうがない。
「…坂、逢坂蕾!」
「ッ、はい。」
「ボーッとするな!ここ、答えろ。」
「あぁ…。」
そんなに私は考え込んでいたのだろうか。
「x=7です。」
本当におかしい。
「…今度からはちゃんと聞けよ。分かったな。」
「はい…。」
私が注意された数分後、チャイムが鳴って授業が終わった。
気づけばもう放課後で
今日は一日無駄に過ごしてしまった気分だ。
仕方なく私は立ちあがると、行くあても無く
足はただ屋上に向かっていた。
何も考えたくない。
ギッ
錆びれた扉を開ける。
ふわっと風が私の顔と髪を撫でた。
青く澄んだ空。
雲ひとつない空がなんだか羨ましい。
「もう、嫌だ、ッ。」
その場に崩れ落ちる。
頬を伝う涙の意味さえ自分でも分からなくて。
この感情がなんなのか分からなくて。
いや、認めたくないのだろうか。
涙は留まることなく溢れてくる。
こんなに泣いたのは何年振りだろうか。
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