BOOK

□零度の蕾
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「はい、席着いて。
転校性を紹介するわよ。」





しばらくして担任が入ってきてHRが始まった。




「男ですか?女ですかぁー?」





静けさはどこに消えたのか。

途端に質問を始める男子。





「さて、どっちでしょうね?」




「えぇー!?」

「ちゃんと答えてよー!」





曖昧な担任の答えに、ブーイングの嵐。

私はその中で退屈そうに窓の外を見た。





「もういいから早く紹介してくださーい。」

「ちょっと、短気すぎ(笑)」





「はいはい。分かったわ。
水城くん、入って頂戴。」





その担任の一言に、クラスの視線は一斉にドアに集まった。

私も反射的か、ドアに視線が行ってしまう。





ドアが開く音がして、クラスがざわめく。

そして、少しずつ視線は教卓へと移された。






『水城陽太(ひなた)』





そう大きく書かれた黒板の文字。





「水城陽太です。よろしく!」





明るく振る舞うこの男を見て、クラスは大歓声。




きっと世間一般ではかっこいいというのであろう容姿。

明るい茶髪に整った顔。背も高い。

それに、あの挨拶からして明るく友達が多いタイプだろう。

私とは、正反対のタイプだ。






「水城くんは以前、この辺りに住んでいたらしいわよ。
昔、知り合いだった人もいるんじゃないかしら。」





「…。」





少し、嫌な感じがした。

この男の名前を私は聞いたことがあるかもしれない。

なんとなく、どこかで覚えている気がする。




でも、少し考えてみたけど分からなかった。

きっと似たような名前だろう。





「あっ、水城くんの席、決めないといけないわね。
誰か隣が空いている人は居る?」





ふいに私に視線が集まる。

隣を見ると、そこは空席。





「…先生、私の隣空いています。」





怪訝そうな顔で「水城くん、可哀想」とこそこそ言ってる女子や
「あいつ、転校早々凍るな」と訳の分からないことを小声で笑いながら話している男子。





…凍らないっつの。





「じゃあ、逢坂さんの隣ね。」




そう言って私に笑いかけて私の隣を指さした。




そして水城陽太は真っ直ぐ私の横まで歩いてきて席に着いた。

それを担任は確認すると、HRを終えた。





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