BOOK

□アイシテル
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とある日、急に少女が泣き叫ぶのをやめた。




少年は心底がっかりした。

自分の楽しみがひとつ、なくなってしまった。



しかし、それもつかの間。


少年はいつものように扉を開け、薄暗いその部屋に食事の乗った皿を置いた。



ここでいつもなら、
少女は訴えかけるかのように少年を見つめ泣いたり
狂ったかのように食事の皿を弾き飛ばし、
大きな音を立てて割れた皿を見つめるなど
大きく偏った行動しかしない。

少年はそれを見て、内心楽しんでいたのだった。




ところが少女は少年を見つめたかと思うとふいに少年の服の裾を握りしめた。



「助、けて…ください…。」



か細い声だった。

少年はその時、比べ物にならないくらいの興奮を覚えた。



今すぐ犯してしまおうか。



そんな衝動に駆られたが、一度落ちついて考えてみる。

もし、このまま無理にでも犯してしまったら
自分の一番望んでいる…、野望に達することは出来ない。


少年にはある大きな野望があった。

それは少女を始めて見たときから少しずつ膨らんでいた欲望だ。



“少女を、自分だけのものにし、
 自分が居ないと生きていけないくらいに服従させること”



我ながら狂っている。

そう、少年は薄々感じていたが
それを一時の迷いと思わせるかのように少年の野望は大きかった。



少年は高まる興奮を抑えるように息をつくと
少女に向かってこう告げた。



「いいよ…、この部屋から出してあげる。
 家から出すことは勿論出来ないけど、この家の中では自由にしてやるよ。」



少年の言葉に少女の表情が少しずつ綻んでいく。



それもまた、少年をたまらなく興奮させた。



「勿論…条件があるけどね。」



その時、少年は少女の表情を伺った。

一度は綻んだ表情だったが、どことなく少女は寂しげな表情に戻っていた。


少年はゴクリと唾を飲み込むと真っ直ぐに少女を見つめ、
淡々とした口調で言葉を言い放っていく。



「お前にこの家での自由を与える代わりに
 お前のすべてを僕に捧げろ。」



少女は一瞬顔を強張らせた。


しかし、今までの待遇がどれだけ苦痛だったのだろうか。

しばらくすると、小さく頷いた。



少年はそれを見て、クッと喉を鳴らし不適に微笑むと
少女の足の鎖を外した。



「じゃあ…これから僕の事は“ご主人様”って呼ぶんだよ、いいね?」


少年はそう言うと、少女を抱きしめた。

少女の身体は壊れてしまいそうなくらい痩せていた。


「はい…ご主人様…。」


少女のか細い声は小さく暗いこの部屋に
ただ、小さく響いた。


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